「文化の日」に秋の叙位の発表があった。
今回は4000人だという。しげしげと見ると、北方謙三、舘ひろし、官僚から元校長や消防団長。
正直、一人ひとりにどのような功績があったのかわからない。ただ、叙勲があると勲章をもらえるらしい。
今年は本物の「勲章」を目にする機会があった。
今年亡くなった方で、私はほぼ面識がない。2、3度ほど見かけただけ。その方の勲章を持って「お別れの会」に輸送する、つまりただのお使いの責を担ったのだ。
金庫から出して、一応入っているか確認する。
布張りの文箱に入った勲章は立派だった。直径5cmくらい。白い大理石のような羽が菊の花のように放射状に飾られたもので、なんともきれいである。本当は写真を出せば一目瞭然なのだけど、勝手にそんなことはできないので止めておこう。
ちなみに内閣府のホームページを見ればどんなものがもらえるかわかる。
私が見たのはちょっと違っていた。
今回私が勲章を私が手にする(ただ運んだだけだが)までには紆余曲折があったようだ。
故人が拝受したのは確かなはずが、家にない。親族が探し回って1週間、2週間経ち、最終的には貸金庫に入っていた。一番可能性は高かったが、本人以外が開けるのに手続きが厄介だったようだ。
いやはやである。
それにしてもあの勲章とやらはどうするのだろう。捨てられないし、着けるわけにもいかないし、安易に飾るのも考えもの。結局貸金庫行きか。貸金庫も金はかかるしどうしようか。
別に親族でもない私が気を揉んでしまう。
かつてモハメド・アリがオリンピックの金メダルを川に投げ捨て、小川直也は帰国後のバッシングに腹を立てて銀メダルをゴミ箱に放り込んだという*1。本人が捨てるのは勝手ながら子孫は捨てにくい。
少し皮肉を言うと、勲章の授与者を見ると4000人もいて、大半が元官僚や公務員、教育や消防関連など。要は「お上」の側の人間だ。
オリンピックの代表を適当に選ぶとバッシングの嵐が吹き荒れるが、4000人の勲章授与者を厳密に精査したとは思えない。それに、もらえる基準なんていうのも明示されていない(推薦とかあるらしい)ので、指名する側の裁量となる。
元官僚、消防団長や学校長が現役を退いてから勲章をもらう功績があるとはどうも考えにくい。受賞者の年齢を見れば70歳以上で現役でないのは明らか。むしろ北方謙三なんかこそ現役だ。
本当に人命救助や顕著な功績があれば現役でもらっているだろうなんて思うし、言い方は悪いが、「官」側の身内賛美みたいにしか見えないのだ。
「子孫のために美田を残さず」という言葉があるが、古今東西を問わず有形の宝というのはあまり良い結果を残さないようだ。
私は山小屋で売っているピンバッジくらいでいい。いや、この間財布に入れていたら針が出ていて、指に刺さってしまった。ピンバッジもいらん。
死後に何も持っていけないのなら、残された人に面倒になるものはもらわない方がいいなと思うこの頃である。
*1:結局捨ててはいないらしい