クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

投稿マニア

高校時代に深夜ラジオを聴いていると、投稿の面白い番組が多かった。投稿は所謂「ハガキ職人」から送られてくるもので、あれだけの労作を毎週作り続ける情熱には大いに感心した。いくらウケても、もらえるのはステッカーくらいだから、毎週毎週いろいろな番組のいろいろなコーナーに葉書を(メール以前は葉書に手書きだった!)買って投稿するのは容易ではなかっただろう。内容はとてつもなくくだらないものが多かったが、よく思いつくなと感嘆するものばかりだった。

ハガキ職人」は完全な自己満足だが、深夜ラジオを構成する重要な要素だったことは間違いない。ハガキ職人からラジオの構成作家になる人もいたらしいが、なるほど納得である。

 

ひと頃弟が新聞の投稿に凝っていた。読者投稿欄に送るわけだが、ラジオの投稿と違って掲載されると図書カードなどがもらえるので、それを目当てにしていた。

その弟が高校生時代、何のコーナーかわからないが、読書感想文を投稿して、それが実名で引用され、わりと長い間ネット記事でも掲載されていた。

柄谷行人『世界史の構造』について書いていた。この本は単行本で横にすると3cmくらいの厚みになるとんでもない分量の本で、内容も難解。私は借りてパラパラめくったが、最初の3ページくらいで挫折した。おそらく「こんな難解な本を高校生が読んで感動したのか!」という驚きを胸に記事を書いたのだろう。ただ、投稿を出した段階で弟は完読していない。まだ初めの方を読んでいただけだった(その後全て熟読したが)。

記事の読者よりまずは記事を書いた方に深く謝らなければならない。

 

私はあまり投稿といったことをしたことがないが、最近定期購読している雑誌にたまに出すようになった。自分の書いた文章や写真が掲載されるのはそれなりに嬉しいし、別に対価がなくても構わない。掲載された雑誌をもらっても元から定期購読しているのだから、同じ雑誌が2冊になるだけだ。

多くの雑誌や新聞では読者投稿を用意している。そして掲載対象となれば何かしらの謝礼をしているし、その謝礼目的の投稿者もいる。しかし、インセンティブを求める投稿者は懸賞と変わらない。インセンティブを求める投稿には文章にその心が見え隠れしてしまうのではないだろうか。

 

純粋に掲載してほしいという投稿者はインセンティブなど求めない。出版不況の中で、インセンティブを求めない読者の多い雑誌だけが存続するような気がしている。