クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

安否確認

安否確認訓練というのがあった。

変な書き方をしたが、要は災害時に安否を確認できるかのテストである。社員の携帯電話に「今無事ですか?」というメールを飛ばし、各社員がインターネットサイトに接続して、「今無事です」、「施設に異常はありません」とかの情報を入力(チェックを付ける)する。危機対策の管理者は誰の安否が確認できてないかを一覧で見ることができるようになっている。

私は事務所内をウロウロしていたら「安否確認が取れてないよ」と呼び止められて初めてメールを見た。歩いていると携帯が震えたかわからなかった。

「事務所を歩き回っているのだから無事に決まっているだろう!」などと言ってはならない。昔から防災訓練はそういうものなのだ。


今日本で最も安否が確認にしにくいのは山だろう。

海は障害物がないからよほど外洋に出ない限りは電波が届くし、外洋に出る船なら強力な無線を積むだろう。飛行機でも今はWi-Fi接続可能な便が多い。

一方山はまだまだ通じないエリアが多いのが現状だ。稜線まで出ると通じることが多いし、山小屋では「docomo入ります」なんて貼り出しているケースもあるが、登り始めから中腹まではたいてい通じない。

一昔前まで山岳雑誌では「山では携帯が使えないことが多いし、電池が切れたら終わりだから、必ず紙の地図を持ち、携帯に頼らない登山をしなさい」と書かれていたのが、最近は「緊急に備えて携帯を必ず持ちましょう」となっている。安全重視の点でブレはないものの、ひねくれ者の私は「どっちやねん!」とツッコミを入れたくなる。


登山者の中でも沢登りは最も安否確認にしにくい場所となる。沢は山の中でも窪地にあたるし、木・岩など障害物だらけなので、ほぼ電波不通となる。さらに泳ぎなんかが加わると、携帯そのものを持って行くか迷うこともある。

当然緊急時の連絡のためには持って行った方が良いのは間違いないのだが、水没して壊す恐れもある。だいたい今のスマホ君たちは高価であるし、私の所持するiPhone SEは防水ではないのだ。壊して後悔する物をハードな登山に持ちたくないのは人情か慳貪か、少々の葛藤がある。

ちなみに下の写真は3年前に奥多摩・海沢で水遊びした時のもので、この時は泳ぐため、携帯を持たなかった。山岳ガイドの方に知られたら叱られそうである。


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安否確認訓練はどれほど効果があったのかわからない。いざ有事の際は安否確認より前に当面の安全を確保する方が大切だろう。防災訓練はどうも管理者側の確認作業練習になっている傾向がある。初期の安全確保は自力でなんとかするしかないにもかかわらず、その練習はしないのだ。本当はまず死なないように行動することが重要ではないのか。

携帯をみんなが持っていることで安否確認はしやすくなった。ただ災害で生き残れるかは別問題で、安否は自分自身が握っている。確認は事後確認に過ぎない。


登山をやっているとそれをよく感じる。ここで踏み外したらおしまいなのだ。

登山の安否は自分しか決められない。