北海道の愉しみと言えば飯である。
登山と言えば信州で海がない。海がなければ山の幸と行きたいところだが、なかなかどうして日本において食は海である。松坂牛もジンギスカンもウニとアワビには一歩譲らざらるを得ない。『魏志倭人伝』に記されたように、倭人は生の貝を喰う者であり、『魏志倭人伝』に拠らなくても海産物賛美の民族なのである。魚、貝を喰わねば何を以て倭人とすべしである。
その思いに溢れた北海道旅行を紹介したい。
①蝦夷わっぱめし
北海道に着いた初日、旭川から稚内へは特急列車を利用した。約4時間の旅である。
旭川でラーメンでも食べるという手もあったが、私も相方もラーメンはインスタントで十分美味しいと思う部族なので、さほど魅力はない。駅構内をぶらつくと、わっぱめしという駅弁があるという。お値段も1000円強で、東京だったら2000円くらいは取られるだとうといういうもの。
味は駅弁としては合格。新鮮というわけではないので店で食べたらそんなに感動はないかも。
駅弁は列車で景色を見ながら食べるから旨いのである。そしてイクラがあればそれだけで嬉しいのだ
しかしながら、これらを仕入れて特急列車に乗り込んだものの、結局は出発するまでに大半を喰ってしまうという毎度のパターンを繰り返すのであった。
②稚内の揚げ物軍団
北海道は鮭である。ヒグマが鮭を咥えた置物がなぜか伊豆とか岡山の温泉旅館にあったりする。
鮭は生でも焼いても美味いわけで、これほど日本人の人口に膾炙する食品は他にないだろう。
鮭の面白さはあれだけ大きな魚が一度は海に下り、その後生まれ育った川にワイワイと戻ってくることである。まるで都会に出てから地元に戻る「Uターン減少」だ。
それを「うまいうまい」と食うのは少し心苦しさを感じなくはない。
なぜか初日の稚内では暗い観光客向けの食堂で鮭とカレイの揚げ物を食べた。
昼に「わっぱめし」で生のものを食していたので、夜は火の入ったものにした。
昨年、カナダのバンフでどうしても魚を食べたくなり、スーパーで鮭を買ってユースホステルのキッチンで焼いて食べたのだが、カナダのサーモンに比べてあっさりしていて、脂が上品だ。今回は揚げ物なので、これくらの脂の乗りがちょうどよい。
それにしても北海道の定食はどれも量が多い。
「こんくらい食うでしょう!」と言われているような気がする。登山というアクティビティがあるから食えるものの、ただの観光旅行に来てこの量は私には無理だ。
北海道民は東京都民に比べて普段から身体を使っている証と言えるかもしれない。
そんなこんなで食っているだけで北海道1日目が終わった。
これから何を食ってどこへ行こうかと私たちは暗い海を見ながら思案した。