クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

北海道名山~利尻山

北海道旅行の目的はグルメではなく登山だった。

いろいろ書いているうちに、ただの「美味いもの自慢」になってしまっているので、「本来」の目的である登山についても書いておきたい。

 

利尻山

最北の日本百名山で、深田久弥は「島全体が一つの頂点に引きしぼられて天に向かっている。こんなみごとな海上の山は利尻岳だけである」としている。

同じく島山で、百名山の最南端、屋久島はあまりに巨大で、海から山の全容が見えなかったのに対して、利尻山は頂上から裾野まで三角のきれいな形が水面から伸びている。

稚内を出たフェリーは2時間ちょっとで利尻島・鴛泊フェリーターミナルに着いた。

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私の友人に、毎年通っている熱烈な利尻ファンがいて、彼女にいろいろ聞いたところ、安く済ませるにはゆ~にキャンプ場がよいとのこと。1人500円で、すぐ近くに20:00までやっている温泉があり、鴛泊の街中から徒歩15分ほど。鴛泊の商店は早くに閉まってしまうけど、コンビニなら23:00まで開いているし、天気さえよければ何泊でもできそうだ。

 

今回、天気の都合でフェリーターミナルに着くなり、キャンプ場に行って受付・テント設営、頂上までサミットプッシュということにした。

利尻山海上に浮かぶ島なので、当然海抜0mから登ることになる。つまりフェリーから標高1700m強を自力で登る必要が出てくるのだ。北アルプスの名峰・奥穂高岳(3190m)の場合、上高地で約1500mなので1700m弱しかない。弾丸登山で有名な富士山なら吉田ルートで1400m、須走ルートで1700m強なので、それ以上の弾丸となってしまった。

 

さて、利尻山登山であるが、一言「長い」。登山道は非常に整備されているので、迷ったり滑落したりする恐れはあまりないのであるが、前述の通り高低差が大きいのだ。

おそらく長さだけなら私の大好きな甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根に匹敵するのではないだろうか。黒戸尾根の場合、途中の七丈小屋に一泊するので、日帰りなら利尻に軍配が上がる。立派な避難小屋があるものの、あまり泊りで登山する人もいないだろうから、利尻山が日本一つらい登山になるかもしれない(相方はつらかったと言っていた)。

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そんなつらい坂を越えて樹林帯を抜けると、礼文島、さらに遠くはかつて樺太と呼ばれたサハリンが見える。日本から外国が見えるのは北海道と沖縄くらいしかないので、最果てに来たことを実感させられる。

 

さらに、夏の利尻島は花の島でもある。

8月ともなると萎れているものも少なくないが、それでも種類は本州の山を圧倒するくらいで、標高のわりに高山植物が多いのが特徴だ。1000mくらいで本州の2500mくらいに咲いているような花が群生しているので不思議な感じがする。

しかし、悲しいかな、私にはその花々を判別できる能力がない。かろうじて「これはアザミっぽい」とか「なんとかキンバイに似ている」と言える程度である。

後で調べてみると、リシリヒナゲシやリシリソウなどの固有種が多いので、種類を判別するのは他の山に比べて難しいようだ。

まあ種類がわからなくても足元の花と遠望する利尻山が美しいには違いない。島の天気は変わりやすいので、突然曇ってしまうことも珍しくないが、足下の花を見に来るだけでも価値があるだろう。

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名前は多分、「なんとかキンバイ」


 

 

そんなこんなでのんびりと登って、行動食を食べ、花を愛でて下山したわれわれがテント場に着いたのは19時を過ぎていた。

いい山で、距離も長いので余計に下山時間に注意を払う必要があることを言い添えておこう。