クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

そうだ黒部行かなきゃ!

唐突だが、黒部に行こうと思っている。

「黒部」という地名だけで何というか、神秘と禍々しさが混在したような雰囲気が漂うのはなぜだろう。極楽浄土と地獄を表した立山信仰。黒部川の削りだした日の差さない渓谷。多くの人々が命を落とした黒部ダムの建設。単なる秘境と言うには人臭く、それでいて人を寄せ付けない荘厳さを持っている。

 ここのところ、上高地から槍ヶ岳穂高岳方面に登る明るい雰囲気とは一転して暗い、日陰のひんやりとした空気が流れている黒部に行くことが多い。

 

初めて黒部に行ったのは5年前の11月。気持ちが荒んだ中で欅平から裏劔を目指したら、阿曽原で真砂沢の吊り橋はもうないと聞いて撤退。

気持ちも山行も消化不良で終わっただけに、もうこのエリアには縁がないのかとも思った。

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紅葉にわずかな光差す黒部峡谷

2度目は4年前、欅平から下ノ廊下 を通って黒部ダムへ抜けた。

峡谷の名にふさわしく、わずかな隙間から天の光が差している。この時は雨上がりに晴れ上がり、黒部ダムに着くころには強い日差しで日に焼けてしまった。

この下ノ廊下の前に変な夢を見た。河原を鬼に連れられて歩いている。川の両側は黒部のような岩壁で、鬼は縄で縛った他の男を連れている。なんであんな夢を見たのかは今をもってわからない。

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波立つ下ノ廊下の白雲峡



 

3度目は3年前、信州側の七倉から船窪小屋を越えて針ノ木谷を下って黒部湖に入っていった。山を越えて奥黒部に到達し、さらに読売新道から赤牛岳、水晶岳鷲羽岳を越えた。

針ノ木谷に人の気配はなく、雪解け水の渡渉を10回くらい繰り返す間は全く人気はなく、奥黒部ヒュッテにはさすがにテント、小屋の宿泊者がいたものの、読売新道から赤牛岳は少数。そこから水晶岳に到達すると急に人が増える。

山を越え、谷を下り、また山を越えと目まぐるしく動き回り、最後は槍ヶ岳から大キレットを越えて奥穂高岳を経由し、上高地に下りた。

上高地に下りると、そこはもう山ではなく街だった。アイス、ビールが売られ、バスが分単位で出ている。

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船窪付近から黒部湖、槍ヶ岳を望む

 

 

黒部に惹かれる理由。それは街から隔絶された空間がそこにあるからだろう。街の喧騒、そして精密に測られる時間。

そこから時には逃げ出したい。

今回はどんな旅になるやら。