10月某日、某都内一流ホテルにて開催された「お別れの会」に行った。主役、(と言っても亡くなった方だが)は某一流企業の元社長。
会場は、大宴会場の半分を祭壇、半分を会食に充てていて、参列者はまず白い花を一輪受け取って、祭壇に向かう。祭壇には故人の大きな写真と大量の花が飾られていて、
「すごいなあ!」
と小学生のように感心してしまう。そして
「どんなけ金かかるんや」
という下世話な疑問が頭をよぎる。
献花が終わると次室へ。現社長(なんだろうな多分)と会長が「どうもお越しいただきありがとうございます」と頭を下げる。こちらも「どもども」である。
昨年亡くなった中曽根康弘元首相のお別れの会はウン千万円、億未満だと聞いた。
著名人の「お別れ」にはお金がかかる。
今は家族葬が多くなっているので、葬儀の費用は減少傾向にある。都内近辺で120万円程度。全国的にも100万円くらいらしい。
「自分の葬式くらい自分で上げたい」
と貯蓄に励む人もいるらしいが、葬儀社に「予約」しておけば、もっと安く済む。亡くなったらここでという葬儀社を決め、永代供養の手続きを決めておけば子どもや親族に迷惑をかけないという考え方もある。
ただし、自分の死を想像しながらこういう手続きを済ませるとどんな気分になるのか。私にはまだわからない。
ただ、これは葬儀であって著名人の「お別れの会」は家族以外がおこなうものなので話は別。
新型コロナの影響は各所に出ていて、「お別れの会」も「待ち」の状態になっているらしい。
「本来なら実施しなければならないが、クラスター感染があるとどんな非難を浴びるかわかったもんじゃないから今は延期」
という理屈で、本当にやりたいのか、やりたくないんだかわからない。
「たくさん金のかかることだからやんなきゃいいじゃない」
というのは小市民の意見で、政治家、官公庁、企業のトップクラスともなると「やらねばらない」らしい。
よくわからん。
さて、「お別れの会」の率直な感想。
・献花はパパっと終わって何だかアッケない。30mくらいある祭壇がどんとあるのに、目にするのも一瞬。
・会食で故人を偲ぶ人はどのくらいいるのだろう。
・最後にやっぱり金がかかるなあという感想に尽きる。一流ホテルの一流会場を全部使って、一流の料理が出るのだ。寿司なんか1人前6巻で5000円くらいするだろう。
落語「片棒」の話。ケチで有名な「けちべえ」さんが、自分が死んだときの葬式を息子3人それぞれに訊く。
長男は日比谷公園を貸し切り、小判型の棺で出棺。花火を打ち上げ「ばんざーい!ばんざーい!」
次男は神田囃子の笛に山車が出て...
三男はもったいないので沢庵の樽に入れて、人足を雇うのももったいないので自分で担ごうか。でも独りじゃ担げないし...
さて、「お別れの会」の故人は3人の息子の誰を選ぶだろうか。