クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

人を見る目を養うということ

「この子はしっかりしている」

90歳になる相方の祖父はそう言って相方を指し示した。

「俺は話せばそいつのことが5分でわかる」

自信満々である。

 

「その人と話せば私は5分でわかる」というのは就活の時に聞いた。

別に就活アドバイザーとかではなく、どこかの企業の採用面接を請け負った面接官だった気がする。我々をビビらせるつもりか冒頭からそんなことを言っていた。

5分間で至らなさを見抜かれたのか、私はその後のステップに進むこともなく、私もそれがどんな企業だったかも思い出せないで今日に至っている。

それにしても「5分で見抜く」ということは可能だろうか、ということが疑問として残って、もやもやしたまま面接を終えた。

 

5分話せば、その人の印象は固まる。

明るい雰囲気、暗い雰囲気、活舌が良い、悪い、楽観的、悲観的、主観的、客観的。どちらがいいのかではなく、こちらからの先入観は固まる。ただ、ハッタリ屋なのか、本当に頭がいいか、慧眼か、節穴か。このあたりは私のような凡人にはわからない。

昨年来たあるセールスは「立て板に水」というタイプだった。すらすら言葉が出るものの、難しいことを言うのでよくわからない。大した話でもないのにいちいち小難しい表現をする。こちらの頭が悪いのか、あちらが頭良すぎるのかと思い、感心しながら聞き続けた。

わからない部分をメモしておき、後から内容を検証する。すると肝心な部分が出鱈目ということがわかった。まさにハッタリ屋でこれまでセールスとしてやってきたのだろう。

 

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また、昨年入った新入社員はマジメそうなタイプだった。

マジメに仕事をし、マジメに資格の勉強をする。上司ならヨロコバしい限りなんだろうが、私の目からは「あまり考えないタイプだな」と映っていた。

真面目・実直と言えば聞こえはいいが、自分が何のためにその仕事をしているのか考えていない。実直というより愚直と言った方がよいようだ。まあ愚直と言うには完成度の低い状態で提出したり、途中で仕事を終わらせずに帰ったり、「愚」の方が強調されてしまうようにも見えた。

最近、上司がこの新入社員について嘆いているが、上司は真面目という先入観に囚われ過ぎていたような気がする。先入観と実体の落差が大きいと余計に酷く見えたようだ。

 

人を5分で見抜くことはできない。これが私の結論だ。

もしくは5分間で身につくのは自分の先入観や偏見である。では人を見る目をどう養えばよいか。

決して侮らないこと、見くびらないこと、買い被らないこと。そして自分には見る目がないと信じることだと思う。

 

さて、件の相方の祖父だが、私から見ると「人に対する先入観が早い段階でできる人だ。そしてその先入観を決して曲げない人だ」と感じていた。