クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

お金を産む方法~お金とは何だろう?⑤

前回、「錬金術」と銘打ってそのことに触れていなかった気がする。

金融機関は数字をいじることでお金を生み出すことができる。しかし、もっと大本をたどれば国はお金を発行できるのだ。実際、通貨を大量に発行した例は歴史上枚挙にいとまがないし、今でも輪転機を回して紙幣を刷れば産めばみんなが豊かになると信じる人がいる。

しかし、本当にそんな錬金術があり得るのだろうか。

スペイン黄金時代、南アメリカ大陸から大量の銀がヨーロッパ大陸に持ち込まれた。スペイン・ハプスブルク家はその銀を使って無敵艦隊を建造し、イングランド制圧に動く。結果、アルマダの海戦でスペインは大敗北を喫っし、「太陽の沈まない帝国」は斜陽となってしまう。そして最後はナポレオンによって征服されるに至ってしまった。

これが通史的な説明となるのだが、経済の面からはそうとも言えないという。スペイン王国は新大陸から搾取した銀で豊かになった。銀があるということがすなわち豊かであることとは言えない。銀そのものは産業にとって役に立たないからだ。

「豊かになったはず」のスペインの無敵艦隊は大量の木材を使い、山を荒廃させただけで、新たな富も価値も産まなかった。

スペイン王国は手元に銀があることで一時的に「お金持ちになった」と信じ込んでいたに過ぎなかったのだ。

 

この話はお金のバラマキに対して大きな教訓を与えてくれる。

経済はお金の問題であってお金の問題ではないということだ。お金があれば新しいことにチャレンジしたり、投資することができる。ただ、次につながらないお金の振り向け方をすれば、元の木阿弥どころか新たな負債を抱えることになる。

お金は"気"の問題と言えるかもしれない。お金は人間の生み出した架空の"価値"を示すものだから、価値を信じる人の中で通用する。そしてお金があるかないかも"気"の問題。架空の上に架空を積んでいるようなものなのだ。80年代に日本が狂奔した「バブル」は好景気を信じるがゆえに発生した。

お金を産むとは金の卵を産む鶏を探すのに似ている。金の卵そのものが架空の存在なら、その鶏もまた架空の存在。

ただ、架空の存在であっても信じて探し続けるのも悪いことではないし、それを見つけたとする人間は歴史上後を絶たない。