クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

モノと物語を買うということ

先日、キャンプで久しぶりに会った友人がこんなことを言っていた。

「モノは物語を買うんです」

彼は今機械式時計に凝っているらしい。今までアップルウォッチを着けていたのが、周囲がみんな同じものを持つようになって嫌になったという。

その機械式時計ではTAG Heureにハマっている。それというのも、TAG Heureはポルシェのターボエンジン開発に関係しているらしく、これが車好きの彼にはたまらないようだ。

しかし、その気持ちはわかる。

特に時計のような今や100円均一でも売っているようなモノであえて高い金額を出すのは物語を買うしかない。私の着けているSEIKOのダイバーズウオッチは大したモノではないのだが、植村直己がエベレストに登頂した時にSEIKOのダイバーズウオッチだったと聞くと俄然愛着が湧いてくるから不思議だ。

 

以前、この友人が「このギアはスティーブ・ハウスが使っていたとか聞くとほしくなるんですよねぇ」と言っていた。

スティーブ・ハウスはナンガパル・バット南壁をパートナーのヴィンス・アンダーソンと完登したアメリカのクライマー。21世紀最高のクライミングなんて呼ばれたりもする(21世紀は半分も過ぎてないけど)。

私は「わかるわかる」と応じたが、その場にいた山仲間の女性は「ぜんっぜん、わからない」と応じた。