クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

ギャングとパジャマ~「現金(ナマ)には手を出すな」

最近よく寝ることができる。年を取ると眠れなくなるなんていうことはなくて、子どもの時と同じくらいの睡眠欲がある。頭は子どもだということだろう。

寝るとなればスーツだろうがジーンズだろうが山ウェアだろうが構わなくて、ここ20年以上はTシャツにジャージくらいが多い。休日は起きてすぐにジョギングができるので便利だ。

ついでに翌日が登山となれば前日寝るときから山の格好で、これまた遠足前日の小学生である。

 

映画「現金には手を出すな」を見た。フランス・イタリアの合同制作だ。

初老のギャング・マックスが引退するための資金源として金塊を強奪する。ところが友人のリトンが軽率にもそのことを踊り子に漏らしてしまうことで話が変わっていく。このリトンが映画の中での問題人物で、この後、金塊を巡る抗争で敵に捕まり、彼が原因で金塊を奪われ、挙句銃弾を受けるわで、世話の焼ける男なのである。

リトンは一度マックスによって救出されるものの、銃傷が元で死んでしまう。マックスは敵を倒すことをできたものの、金塊を失い、リトンに死なれ、なんのための騒動だったのかと呆然として映画は終わる。

 

その中で印象的なシーンが、マックスとリトンが隠れ家の同じ部屋に泊まるシーン。

マックスが不甲斐ない相棒に言う。

「パジャマだ。ほらタオル。歯ブラシ」

黙って受け取るリトン。そして2人ともストライプのパジャマ姿になる。

マックスを演じるジャン・ギャバンは初老の渋いギャングにぴったりの雰囲気で、高級そうなスーツをバチっと着こなしているのが、夜はパジャマで寝るらしい。相棒のリトンと2人、パジャマを着ると渋いギャングから修学旅行の小学生に変わっている。なんともプリティだ。

山屋は着の身着のままが普通だ。山シャツはスーツで、作業着で、パジャマなのだが、ギャングはそうもいかない。TPOに応じた身だしなみが必要であり、夜はTシャツ、ジャージではなくパジャマを着なくてはならないらしい。

 

この映画は、静かな引退生活を求める初老ギャングの最後の戦いと哀愁を描いたものである。哀愁とは過去のしがらみや友情を捨てられない男の生き方から発せられるものだろうか。

夜はパジャマに着替えるギャングは簡単に過去の自分から着替えることができないようだ。