クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

深田久弥の『日本百名山』と野口英世の親孝行~偉人の真実

今、我が家にはテレビとHDDレコーダーが一応ある。しかしながら、付けるのは週末限りで、先週は全く見なかった。

その中でわずかに見る番組の一つがNHK「グレートトラバース15min.」。アドベンチャーレーサーの田中陽希さんが百名山を人力で旅するもので、今地上波で放送されているのは数年前の再放送だ。

百名山は作家・深田久弥が『日本百名山』として連載したもので、特に公式機関の選んだものでない。ただ、現在は「百名山」の標識は必ず山頂にあるほど「公的」権威を持つものとなっている。

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結局、登らなかった先日の西吾妻山

深田久弥はクソ野郎だよ」

と相方は言う。日本の山を愛した人であるから清廉潔白の君子かと思いきやそうではない。深田久弥の初期の作品は最初の妻・北畠八穂に手を加えたもので、いわば盗作。しかも、その後、妻が重病に侵される中で浮気をし、復員後に離婚。北畠がこの盗作事実を告発したことで、文壇での地位を失うことになる。

地位と名誉を失った深田は故郷でひっそりと暮らしながら、好きだった山登りを再開し、『日本百名山』を書くことになる。

まあ、美談にしようにも脊椎カリエスに侵され、しかもゴーストライターをやっている妻がいるのに、他の女と通じて子どもを作り、離婚するのだから言い訳しようがない。不倫があるから『日本百名山』があるのだが、山の涼風に似合わないのは間違いないようだ。

 

福島、猪苗代でよく見るのが野口英世記念館の案内ポスター。ポスターには必ず母しかとの仲睦まじき写真が載っていていかにも親孝行な息子に写っている。

しかし、野口英世は病理学者としての偉大な研究とは別に、とんでもない遊び人という一面があり、東京で学生をしながら、遊郭に入りびたり、金を借りては踏み倒すことを繰り返した。

しかも、母しかが拙い文字で「帰ってきてほしい」と嘆願するのを無視して、結局1度しか帰らなかった。ポスターに掲載されているのは、おそらくたった1度の帰省時の写真だろう。

その母の出した手紙が記念館に残っいる。このことは母の愛という美談として語られるわけなのだが、息子の方は学問が忙しいというより遊び呆けていたというのが事実のようだ。

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猪苗代湖方面の眺め

深田久弥野口英世も故郷では英雄として記念館が建てられているが、人間的にも素晴らしいというわけではないらしい。逆に現代は人間的にもパーフェクトな人しか表舞台に出られず、少々の醜聞も誇大に伝えられてしまい、なんとも生きづらい世の中だとも言える。

太宰治も借金を作り、友人を身代わりにして逃げたという。

「友人を身代わりにして逃げるなんてそんな奴が『走れメロス』なんか書くなよ!」

そうやって相方が勝手に憤っていると、山友夫婦の夫君がこう言った。

「だからこそ書けたんじゃない。メロスだって自分が死にそうになって友人を身代わりにして逃げたんだから」

死ぬまでに行きたい日本の絶景ポイント三選

そろそろ紅葉のシーズンになる。ついこの間キャンプに行ったばかりだろうと言われそうだが、どこかに行きたい。

キャンプへ一緒に行った友人夫婦は毎週どこかの山やら沢へと繰り出し、今度は釣りをしたいという。何だか生き急いでいるようでもある。しかし、身体が自由に動き、自由に時間を使える期間というのには限りがあるものなのだ。

人生には締切がある。

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秋田・高松岳の紅葉

それでは今回はこれから行きたいところを列記しておきたい。

白神山地

今年は屋久島、知床を縦走できたのはそれなりに満足なんだけど、白神山地は行けていない。何よりアクセスが悪いし、車がないと結構きつい。

単に白神岳を登っておしまいだと面白くないし、かと言って沢登りは時間もかかるし。グズグズしていると本当に行けなくなる。

 

西表島

私は沖縄そのものに行ったことがない。どうもリゾート地というイメージが強くて放浪の一人旅に向かない気がしたからだ。

ただ、かつて西表島だけはトレッキングを計画したことがある。島の内部はジャングルに覆われていて、高い山はないものの南の島特有の原始的な雰囲気を残しているという。夏は到底行ける状態ではないらしいので、冬しかない。

ここのところ沖縄は行きづらい雰囲気だったが、そろそろいいだろうか。

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同じ伊豆七島でも式根島

八丈島青ヶ島

離島の旅が好きだ。島を流れる時間が好きとも言えるかもしれない。島に行くとあくせくする気がしなくなるのがいい。

ここ最近では、3年前に神津島式根島、昨年は利尻島礼文島、今年は屋久島に行った。そこで今度行きたいのは八丈島八丈島なら竹橋からフェリーか、羽田から飛行機ですぐなのだが、上陸するのが日本最難と言われる青ヶ島まで足を伸ばしたい。

 

いやいや、他にも平ヶ岳の下にある恋ノ岐川とか『岳人』でマイナー十二名山として掲載された丸山岳、アクセスのとことんわるいトカラ列島など。行きたいところはまだまだある。

海外に行けるならベネチアとかもフツーに観光したいし、と煩悩は尽きることない。

福島の蕎麦 vs ラーメン対決

先日の小野川湖キャンプに行く際、車を持たないわれわれは午前7時に最寄駅から数駅のところでピックアップしてもらった。キャンプ場のある猪苗代湖までは5時間ほどで、高速のインターを下りるとすでに正午前。

福島まで行って何を食べるか。それが問題だった。

 

結局、事前に入念なリサーチなどしていないので友人が探してくれた「食べログの得点が高い店」ということで蕎麦屋に入った。いや、外観はただの農家で蕎麦屋とは思えない。店は混んでいてお店のおばさんが手ぶらで外まで出てきて

「何にします?」

と注文を聞く。メニューは「もり」と「とろろ」しかないらしい。

店(というか家)の横は畑で脇に薪釜がある。その辺にパプリカや大根が置いてあって、店という感じはますますない。店内に呼ばれ、8畳くらいの畳の部屋に腰掛けると、注文したもりそばが出てきた。

野菜のお浸しと山菜天ぷらが付いて1000円。とろろ付は1100円。

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蕎麦と山菜天ぷら

蕎麦は手打ちらしく腰があってなかなか。そして山菜の天ぷらがなんとも絶品である。菊の天ぷらは初めて食べたが、なんとも言えないほろ苦さが蕎麦に合う。その他、かぼちゃも甘いし、しし唐や小さなシソくらいの謎の山菜も美味い。
店名はあえて書かないが、猪苗代インター近く。農家の並ぶ少々わかりにくい場所にある。

 

キャンプからの帰り、西吾妻山に行った。結局、碌に準備もせずに登ったので、空腹から途中下山するという山屋にあるまじき登山をし、とにかくどこかで昼食を取ることにした。

福島で何を食べるか。私の脳裏に浮かぶのは喜多方ラーメンくらいしかない。早速友人がGoogle先生に訪ねて入ったのは商店の並ぶ通りにある大衆食堂といった店だった。

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福島と言えば喜多方ラーメン

私はチャーシューメン。相方はその店のもう一つの名物、ソースカツ丼にした。

ラーメンは醤油ベースのちぢれ麺で、チャーシュー・メンマ・ネギだけのシンプルな構成。スープはあっさりした醤油味で、ザ・ラーメンという正統派の雰囲気。喜多方ラーメン独特のちぢれ麺は初めて食べたが、前日の蕎麦と同様に歯ごたえがあって美味い。

期待したチャーシューはあっさり、そして少しパサついていて今一つだった。

しかし、喜多方ラーメンの実力は想像以上。ラーメンのためにわざわざ行かないが、また食べたいと感じさせる味だった。

 

たまたま入った福島の蕎麦とラーメンの2店。福島を見直すと言うと大袈裟ながら、なかなか逸品だった。こういうB級グルメこそが日本の食レベルを証明しているのかもしれない。

ラグジュアリー・キャンプへの道②〜福島・小野川湖レイクショアキャンプ場

ラグジュアリーなキャンプはやはり食事からである。普段、登山での食事もまあまあ楽しいのであるが、いかんせん荷物が限られるので、ラーメンやフリーズドライといったレトルト食品程度のものになる。

それに比べたら今回は車なので、酒に生の肉を持ってきている。道の駅で買った地元新鮮野菜も加えてこれぞラグジュアリーである。

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やけに暗い食事(野菜味噌汁を作っている)

メニューは先日買ったスキレットで焼肉。あとは鍋で野菜味噌汁。その他串に刺して焼いた高級ソーセージ。いつもに比べたらはるかに豪勢。

しかし、野菜を切っているうちに日が暮れ、暗くなり、灯りを点ける段になって気づいた。山屋であるわれわれの灯りは全員ヘッドライト。ここで本当のラグジュアリーキャンパーなら煌々と照らすガスまたはオイルランタン。最低でもLEDランタンを持参するところが、そんな装備をそもそも持ち合わせておらず、個々人がヘッドライトで手元を照らすという、結局は山と同じ。しかも、皿なんか誰も持ち合わせていないので、各々鍋の蓋やらに肉を盛り、ビールは缶のままぐびぐびと飲む。

写真も暗いしラグジュアリー感は全くない。

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ラグジュアリーな焼肉

しかし、まあ焚火でソーセージを炙り、スキレットで肉を焼き、ダラダラとくっちゃべる。火がパチパチとはぜる音が時々聞こえてくる。酒を注いで口に含み、話に耳を傾ける。

最もラグジュアリーな時間である。

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小野川湖ではカヌーもできる

翌朝は起きて小野川湖の湖畔を散歩し、テント場に戻ると家から持参したスパゲッティを焚火で茹でて、自家製バジルソースで食べた。コーヒーを飲み、優雅な朝。

今回はヘリノックスのチェアワンだけがラグジュアリーな雰囲気を出してくれたが、友人夫婦はアコーディオンマットに腰掛けていたし、山屋のラグジュアリーキャンプの先は長い。結局タープも張れずじまい。

まあ今回はこんなもんだろう。

ラグジュアリー・キャンプへの道①〜福島・小野川湖レイクショアキャンプ場

キャンプをしたいと願ってはや1ヶ月。福島県猪苗代湖近くの小野川湖でキャンプをしてきた。小野川湖にはいくつかあるキャンプ場のうちで小野川湖レイクショア野外活動センターというところで、場所は少々わかりにくく、最も奥まったところにあった。ここを選んだ理由は直火で焚火ができるところにあった。

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チェアワンのある優雅な(?)キャンプ

着くやテントを張る。われわれは黄色のモンベルのステラリッジ。今回車を出してくれた山友達夫婦は緑のエスパーステントということで登山の延長みたいだ。今回のテーマはラグジュアリーなのに、やはり山道具からの転用となるのである。

しかし、われわれは今回ヘリノックス・チェアワンというラグジュアリーなアイテムを用意している。まずはチェアワンに腰掛け、優雅にコーヒータイムとする。

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黄色の山岳テントと緑の山岳テント

友人夫婦は着いてから小一時間テントの設営などに時間がかかっていた。これまたラグジュアリーにタープを張ろうとしたのだが、沢屋である彼らはタープ用のポールを持参することを潔しとせず、立木などを使って張ろうと悪戦苦闘していた。スリングを立木に巻き、カラビナをかけ、ロープを連結し、とまるでマルチピッチ・クライミングでもやるかのようなテクニックを使ったものの、下に寝ることしかできないようなロールーフにしかできず、結局諦めてしまった。

ラグジュアリーの道は遠い。

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直火キャンプができる

コーヒーを飲み、あとは焚火の準備を始める。こうなると焚火と贅沢な食でラグジュアリーとするしかない。

焚火は難しい。薪は買ってきた(買ってきてもらった)。しかしながら、着火剤など持ち合わせてないので、そのあたりの小枝やもらった新聞紙、ガスコンロを使って火をつける。火床は決まっていないようなので、草の生えてないところを濡れた木で囲う適当な焚火。火の粉が飛ばないか、延焼しないか気を付けなければならない。焚火台を使うのと違って地面の上にダイレクトに薪を積んでいるので、風の影響を受けやすいのだ。

煙が舞い、火の粉で新品のチェアワンに穴が開かないように動き回り、なんだか思っていたラグジュアリーとは程遠いことに気づいた。(つづく)

死ぬまでに行くべき日本の絶景三選③

秘境というところがあれば行ってみたい。

日本国内なら北アルプス・雲ノ平なんかはそう言われる。確かに薬師岳水晶岳鷲羽岳黒部五郎岳に囲まれた中に湖沼の浮かぶ大地は秘境感たっぷりである。

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秘境・雲ノ平

大杉谷を絶景として取り上げたが、黒部峡谷なんかも外界と隔絶された感がある。特に秋の紅葉は絶景そのものである。

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紅葉の黒部峡谷

いろいろ取り挙げるときりがないものの、本当の秘境を見つけるのは難しい。秘境として知られている以上はすでに秘境ではないという矛盾があるからだ。

それでもついついWebや雑誌や書籍で「秘境」と見るとふらふらと行ってしまうのがこの言葉の魅力である。

 

③知床の山

今年、ここはなかなかと感じたのは知床の硫黄山近く。

知床の山としては羅臼岳が知られており、百名山ということもあってそこの往復は人が多い。ただ、その北方に伸びる知床連山を縦走するとなると交通の便も悪くて一気にすくなくなる。

人が少ないのは秘境にとって重要な要素である。「秘」ある以上は人が知らなくては意味がない。その知られざる奥地の中のキャンプ指定地が私にとっての秘境となった。

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奥に見える山

知床の最奥、硫黄山から少し下ったところに第一火口キャンプ指定地というところがある。連山の稜線から少し下った台地で、水場は残った雪渓。フードコンテナがあるだけという人工物の極めて少ないところだ。

私たちが行った時は、先客が1人。その奥にはさらなる先客として鹿1頭がいた。鹿は何の警戒感もなく草を食んでおり、優雅に飛び跳ねながらそのうちどこかに行ってしまった。

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鹿の遊ぶキャンプ指定地

キャンプ指定地からは遠く羅臼岳、目の前には知円別岳。チングルマが咲き乱れ、地上と隔絶されたような景色が広がっている。

地図にはヒグマ注意とあるからむやみに食べ物を出すわけにいかないが、ぼんやりと外にいるだけで贅沢な時間がタダ流れていく。

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第一火口から少し行った知円別平

翌日は知円別岳を回り込むと知円別平に出た。ここは幕営禁止だが、泊まれたら最高と思える場所である。

結局、絶景三選として選んだのは①屋久島、②大杉谷、③知床とやや脈絡のないものになった。これからもこの三選は変わっていくだろう。私にはまだ見ぬ絶景がたくさんあるに違いないのだから。

死ぬまでに行くべき日本の絶景三選②

昔から三選というのが多い気がする。

平安時代の三筆、三蹟、寛政の三奇人、オリンピックのメダルも3つまで。なぜ3つとなるかはわからないけど、おそらく覚えるのに都合がいいからだろう。これが権力がらみの話となると、ローマの五賢帝、京都・鎌倉の五山と枠が広がる。3つでは足りなくなったのかもしれない。

それはともかく、勝手に絶景三選の2つ目の紹介。

 

②大杉谷

日本三大渓谷というものがある。富山・黒部峡谷、新潟・清津峡と三重・大杉谷とされていて、アクセスが少々悪いせいかあまり知られていないのが大杉谷である。

大杉谷は紀伊半島大台ヶ原の東に位置する渓谷で三重県にある。もともとは鉄道会社が観光地として開発しようとした経緯があり、風光明媚では知られていたが、吊り橋の落下事故などが発生したことで、観光地としての歴史は断たれてしまった。今は基本的に登山者のみが入れるところとなっている。

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道は整備されているが

公共交通機関で行く場合、JR三瀬谷駅から予約制のバスが出ている。

観光地となるはずだったので、道は整備されている。ただ、この大杉谷は日本で一番の降水量を誇るエリアでもあり、常に雨とスリップに気を付けなくてはならない。

私が行った時も下山中にスリップし、崖下に落下した人がいた。大杉谷の奥に位置する桃の木小屋まで数時間かかるので、体力的に余裕がないと事故が起こる可能性が高くなる。

危険なところは鎖が付いているので、注意すればまあ大丈夫。足元が岩場というところが多いので、岩稜帯の歩き方に慣れている方がいい。

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大杉谷のシシ淵とニコニコ滝

そんなこんなの困難を乗り越えて谷の奥に進むと、ハイライトはシシ淵とその奥に見えるニコニコ滝である。

黒部峡谷のような両岩壁の反り立つ圧迫感はないものの、未踏の渓谷を行く探検隊のような気分を味わえる。決して秘境ではないのだけど、秘境感が溢れているという意味では私の中では一番だった。

大杉谷は多くの人がマイカーでアクセスして途中で引き返すという方法を取るが、谷から尾根を登って大台ヶ原に行くこともできる。Valley to Summit。

5年ほど前に行ったけどまた行ってみたいと思った日本の絶景だった。