クモノカタチ

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「シェフ」は何を望む?

 

シェフ 三ツ星フードトラック始めました (字幕版)

シェフ 三ツ星フードトラック始めました (字幕版)

  • 発売日: 2015/05/13
  • メディア: Prime Video
 

 緊急事態宣言が出て、家に閉じこもることが増えた。そうなると外食はほとんどせず、3食自炊ということになる。自炊だと外食より安上がりなので、ちょっと高い食材でも手を出しやすくはある。ただ、バリエーションに限界があるので、食傷気味になりやすくなってきた。最近台所にいろいろ調味料が増えているが、完全に使いこなせればもっと料理が楽しくなるだろうな。

 

さて、映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を見た。

料理の腕前は一流だが、生き方は不器用な男が主人公の「シェフ」である。彼は勤めている有名店で料理の内容についてオーナーと対立し、クビになってしまう。シェフとしてのプライドがいくらあっても披露する場所がなくてはどうにもならず、男は途方に暮れる。その男には元妻と子どもがおり、この元妻はまだ友人として付き合っていて、彼女が何とか力になれないかとフードトラックの開店を勧める。プライドの高い主人公は最初この提案を渋るが、手回しの良い元妻の手配で、元部下と子どもの3人でキューバサンドのフードトラックを始める。

この映画でキーとなるのはTwitterで、彼をクビに追いやるのもTwitterならフードトラックで成功を収めるのもTwitterのおかげとなっている。私はやらないのでよくわからないが、Twitterの影響力は絶大というのがこの映画での根底にあるようだ。

 

Twitterと出てくる料理が美味そうなことを除けばこの映画で特筆すべきことは何もない。主人公のシェフはB級グルメでも才能を遺憾なく発揮し、各地でブームを巻き起こしながらフロリダ・マイアミからアメリカ南部を横断し、無事ロサンゼルスに到着する。

結局、彼はこのキューバサンドによって、かつて彼が有名店をクビになるきっかけを作った料理評論家の評価を覆し、元妻との仲も復活し、ともに旅をした子どもとともに"They live happily ever."となるわけで、なんともアメリカ的ハッピーエンドである。

この映画、物足りないのは、主人公はまったくと言っていいほど苦労をしていないことだ。有名店をクビになったのはオーナーと喧嘩したのが原因だが、別に料理人としての腕が悪いわけでなく、経営方針の食い違いだし、腕は一流でフードトラックから始めたキューバサンドは最初から飛ぶように売れ、かわいい子どもに尊敬され、美しい元妻と復縁。「いったい次に何を望む?」と訊きたくなってくる。

 

映画の主人公は適度にハングリーでないといけないらしい。