クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

2018-01-01から1年間の記事一覧

昼食難民

都内の事務所に勤務してもう何年も昼食は弁当にしている。他人からは慳貪あるいは節約によるものと見られるが、これでも最初の2年くらいは外食だった。しかしそれを弁当に切り替えたのはそれなりの理由があるのだ。 会社は都内山手線外の某駅の近くで、外食…

北海道自転車放浪記-9

自転車旅に「放浪記」というタイトルは少しそぐわない。自転車族はどこかを目指して走っているので、あまり無目的に「放浪」している人はいない。目指すのは大概が端っこで岬などが目的地になり、自転車を今日も明日も東へ西へ、北へ南へ走らせることになる。…

北海道自転車放浪記-8

多和平からは阿寒湖方面に向かい、途中1泊して帯広に向かった。北からの追い風の中、まっすぐな道を滑るように進む。時折風の中に獣の匂いが混じり、しばらく走ると牧場が姿を現す。巨大な米俵のような藁の塊がぽつぽつとある。牧草ロールと言うらしい。 途…

北海道自転車放浪記-7

北海道らしい景色と言えば広大な牧場や地平線まで伸びる大地、緑の草原を自由に疾駆する馬。知床までを往路とすれば知床以降は復路となる。折り返しを迎えて最後には北海道らしい景色に出会いたかった。 知床からは海岸線を中標津まで進み、道東の内陸部を通…

北海道自転車放浪記-6

いよいよ知床に来た。 知床半島は北海道の角のように北東へ張り出しているが、その付け根から付け根へ知床縦断道路が走っている。西の付け根は斜里で、東の付け根は羅臼である。 私は夕べバーベキューをごちそうしてくれたお兄さん方に礼を言って別れを告げ…

北海道自転車放浪記-5

今振り返ると、過去の出会いを大切にすればよかったなと思うことがある。「旅は一期一会、出会いはその時だけ」と勝手なスローガンを掲げていたせいか北海道2週間の旅でその後につながる交流は何も残っていない。今でもサロマ湖近くのキムアネップで会った…

北海道自転車放浪記-4

同級生のライダーとは北海道に入って4日目に別れた。最初から日中の行動はバラバラだし、バイクと自転車ではあまりにスピードが違い過ぎる。旭川を過ぎて私は一直線に知床を向かったが、彼は最北の宗谷岬の方も行ってみたいという。 旭川からは山道を登って…

北海道自転車放浪記-3

船は真っ暗闇の北海道に着いた。 前日の23:57に舞鶴港を出港して23時間、23:00に小樽港に着いた。船から吐き出された自動車やバイク・自転車はたちまち方々へ散って行った。道沿いに見かけた牛丼屋で同級生と2人で飯を食い、24時間営業のスーパー銭湯で風呂…

北海道自転車放浪記-2

北海道へは舞鶴から小樽へフェリーで渡った。しかし、まずは自宅から京都に住むバイクの同級生の下宿に寄って一泊。翌日舞鶴に向かい深夜発のフェリーに乗る。何事もなければここらの記載は飛ばすつもりだったが、実は舞鶴までの道が一番困難だった。 出発2…

北海道自転車放浪記-1

部屋の片づけをしていると得体のしれないものが見つかったりする。プラスチックの書類を入れるケースの中から箱に入った数珠が出てきた。どこで手に入れたのか全く記憶にない。 その箱の隣にもう一つ箱があり、開けてみると写真がバラバラ出てきた。一番上に…

火事と喧嘩

もはや師走である。 定例のボルダリングを終え、近くの駅に降りると赤色灯があたりをぐるぐる照らし、商店街に消防車が止まっていた。どうやら商店街の店で火事があったらしい。火はすでに消し止められたのか、現場を紐で囲い、警察官が現場に野次馬が立ち入…

未読本

気が付くと本が増えている。そろそろ引越しも考えているので、蔵書整理の時かもしれない。そのうち電子書籍の導入も検討すべきかとも思う。 本も無闇に買ったりしない。基本的に「嵩張らない」「再読する」ものを選んでいるはずだが、なぜか未読のまま手元に…

雪中手袋考

「今年も冬が来た!雪が降るぞぉ!アイゼンだ!ピッケルだ!」 書いてはみたが最近冬の盛り上がりがなくなってきた。冬は寒くて休日に早起きして一駅歩いて始発に乗って山に行くのはどうも億劫だ。行くとそれなりに楽しいが、夏に比べると圧倒的に体力的・心…

家を建てる

帰り道に前を通る不動産屋の表に建売住宅の宣伝が目立つようになった。来年の消費税増税前の駆け込みを狙っているのだろう。元値が云千万だから2%の違いでも何十万かになる。 宣伝文句は「駅から徒歩〇分」とか「3階建て」とかいろいろあるが、金額はどれ…

科挙的社会

宮崎市定『科挙』を何気なく手に取った。パラパラ読みなので読解しているか自信はないのだが、学術的歴史が久しぶりに面白かった。 科挙は言わずと知れた中国の官員登用試験である。歴史は隋の文帝から始まり、清代末期まで続く。今まで知らなかったが、この…

受信料制度について

たまには社会的な話題でも書こうと思う。 何年かに1度、ポストにNHK様から豪壮な封筒が届く。受信料の支払いに関する案内である。「受信料の支払いは義務です」と脅し文句のように書いてある。 いくら脅されても今の私の家にはテレビはないし、スマホもパソ…

あたる前

世の中、抗菌・除菌だらけ。 冬になってトイレにクレベリンが置かれるようになったがどのくらい効果があるのだろうか。電車のつり革にも抗菌と書かれていたりするが、永久に菌に耐えられるのか?魔除けの札みたいなもののような気がする。あれは「つり革に付…

たこ足シューズ

いつも玄関に3足のランニングシューズが転がっている。足は2本しかないのだから6つも転がるシューズは過剰だし出入りには邪魔である。なぜそんなに必要なのだと言われればそれぞれ用途が違うのだが、使い分けるほどのランナーかと聞かれれば反論できない…

年俸・年収

床屋に行くと、理容師の2人が仕事の合間に(カットの途中だが)雑談していた。 「丸は自分の評価を知りたいって言ってたが、やっぱり年俸の高いところに行ったな」 「30億とか言ってるが本当は50億くらいかかってるんじゃないか?」 「これで活躍しなかった…

旅の本

山から下山して電車に乗り込むと、まず手元にWALKMANと文庫本、飲み物を用意する。飲み物はその時々、水だったりお茶だったりアルコールだったりする。電車が発車すると、飲み物を一口、そして文庫本を開く。 山に行って「山の本」を読むことは少ない。目の…

ようつう部

土曜の朝9:00から11:00にFMヨコハマで"Futureescape"という番組がやっている。番組名はカッコイイのだが、内容は緩いトーク番組で、小山薫堂さんがいい味を出している。いい味を出しているのに時々番組をサボってもう1人のパーソナリティー柳井麻希さんとゲ…

おうちのごはん

久しぶりに妹のところへ行っていろいろ話した。 彼女の夫くんは化学者である。化学者というのは「いい加減」なことをできないらしい。「いい加減」にもいろいろあって、数学者なら論理的矛盾を嫌うとか、経理人間は数字が合わないと嫌とかあるが、化学者は分…

東京人と大阪人

用事があって大阪へ行った。少し時間があったので大阪駅から歩いてみた。 早朝なので人も車もまだ多くない。そして気になるのが、信号無視が多いこと。もちろん大抵は歩行者だが、1度赤信号を渡る人と車がわりと近い距離ですれ違っていて、顔を見上げると、…

遊びをせんとや

「アメリカ人ってのは、遊びの天才じゃぁなぁ」 広島にいた時、取引先の社長がそんなことを言っていた。彼は従業員10人くらいの会社の社長だ。奥さんが「肝っ玉かあちゃん」という感じの人で役職は専務。業務の大半はこの専務が行っている。社長はというと商…

山での死について考える

『岳人』の12月号の特集は「山の事故から身を守る」だった。印象に残ったのは古澤早耶さんの記事で、実父が遭難死したことについて書かれていた。 私は幸いなことに本格的に遭難したことはないし友人・知人を山で失ったことはない。それでも雪山で滑落してク…

山の奇人変人

晴れた休日に山下公園に出かけると気候が良いせいかたくさんので溢れていた。そしてたくさんの「変な人」がいた。 銀杏をバックに写真を撮影している男女、女性は若いが男性はその父親くらいの年齢、がいた。雑誌か広告の撮影かと思ったが、カメラはプロ仕様…

駅弁賛歌

自動車を使わない登山になると自然と鉄道の旅となる。翌日が仕事となると特急で早々と帰宅したいが、余裕があれば鉄道の旅を楽しむのも一興だ。1人でぼんやり外の山々を眺めながら車内の人間観察をするのも悪くはない。 鉄道旅の多少の問題は食事である。登…

葷酒山門に入る

11月の初め黒部川・下の廊下を行くため、久しぶりにテント泊で山に入った。もう山中は寒くなってきて、後立山の峰々には雪が積もっていたが、山馬鹿はたくさんいて阿曽原のテント場は大盛況だった。 私が着いてから1時間くらいしてテント場に男女3人組のグ…

イジワル質問

先日、社内研修で夜の座談会があった。テーマは「10年後の会社の未来」。同じ社内とはいえいくつかのセクション、職種の違うメンバーで、それぞれの事業の将来について話し合ったのだが、かなり噛み合わない議論になってしまった。まあ当日に突然のネタ振り…

ジャンクフード

アメリカ・西部。赤茶けた乾いた大地に伸びる道を一台の乗用車が走っていた。あたりはモニュメントバレーに代表される景勝地であり、西部劇の舞台となるような砂漠である。乗用車はセダンタイプのレンタカーで、運転席には父親、助手席には母親、後部座席に…