国立近代美術館「重要文化財の秘密」という特別展を見に行った。
タイトルはもう少し何とかならんかとも思うのだが、展示は凄い。明治以降の日本の美術界が勢揃いという感じなのである。特に高村光雲の「老猿」や高橋由一「鮭」は一度見て見たかった。
実物は想像以上に大きい。「老猿」なんかは床の間サイズくらいに考えていたら、1メートル以上ある。鮭も実物の鮭の5倍くらいありそう。
それと、近寄ると粗いタッチのもの。近寄っても繊細なもの。両方ある。自分の想像とは大概逆なのも面白い。
なんでも本物を見るとわかることが多い。
前漢の元帝の時代、匈奴の王に嫁すこととなった後宮の美女を描いている。画家に賄賂を贈らなかったために醜く描かれ、そのため匈奴へ行く羽目になったという。
王朝の事情で異国に差し出されるのだから美醜を問わず悲劇だ。しかし、画家が描いたとおり不美人なら問題なく話が終わってしまい、美人だから悲劇性が増すという意味では世の中は最初から不公平にできている。
それはともかく想像以上に繊細な筆致。王昭君の凛とした表情がいい。
その他、横山大観の「生生流転」は巨大な水墨の絵巻物で、川沿いを旅するようで非常に楽しい。昨年富山から岐阜まで乗った高山線みたいだ。
雨の週末だったので、芸術鑑賞もたまにはいい。事前に歴史的背景を予習してから行くことをお勧めします。