クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

『走れメロス』と太宰治

先日、ランニングをしていたら三鷹のあたりで人だかりができていた。

何かと思ったら、鉄道車庫を跨ぐ歩道橋が閉鎖になるとかで、最終のイベントをやっているらしい。イベントと言っても特に何があるでもなく、予約者のみ上がれるというだけだが、屋台まで出店していて、老若男女さまざまな人が上がっていた。

フェンスにかかっている説明書きを読むと太宰治も歩いたとのこと。最期、玉川上水に身投げしたせいか、三鷹周辺では太宰治の名前をよく目にする。

太宰治と言えばどの作品か。私は『人間失格』かなあと思うのだが、性虐待やらドラッグまで話が及ぶので青少年向けにならない。したがって、小中学校ではだいたい『走れメロス』が取り上げられる。

しかし、『走れメロス』が名作だろうか。

短慮の青年が王様に喧嘩を売って、死刑になりかけたので友人を形に出してしまう話だ。一応、メロスは帰って来て友人も助かり、王様もその友情に感激してハッピーエンドとなっているが、メロスの粗忽が引き起こした悲劇とも言えなくもない。というか一周回って喜劇だろうか。

太宰治は金を借りて友人に押し付けて逃げたという。メロスは逃げなかったが、太宰は逃げた。それを聞いてから小中学生に『走れメロス』を読ませるとどんな反応が返ってくるか、少し興味がある。

さる知り合いはこの話を聞いてこう言っていた。

「だから『走れメロス』を書いたんじゃない。逃げちゃダメだってことで」