クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

読書

『日本百名山』と旅の要素

山の本の代表格と言えば、深田久弥『日本百名山』である。あまりに有名なので、私も買って本棚に入れてはいるものの、なかなか完読できないでいる。 なぜかと言えば行ったことのない山は読まないからである。 先日、行った会津駒ヶ岳で私は百名山のうち47に…

さくらももこ『さくらえび』と「まとも」な生き方

今さらながら、さくらももこ『さくらえび』を読んだ。 「ちびまる子ちゃん」の時代は遠く去り、バツイチ子持ちの漫画家さくらももこが綴る日常である。漫画のまんまいい加減な父ヒロシ、わがままな息子くん、しっかり者と思いきやクセのある母。 どこか不思…

本で読む登山家の系譜~山野井泰史『垂直の記憶』と佐瀬稔『狼は帰らず』

私が初めて読んだ登山家の本は山野井泰史『垂直の記憶』だった。 中学生でクライミングに出会い、高校卒業後はアメリカ ・ヨセミテでクライミングバム(放浪者)生活。その後は北極圏や南米・パタゴニアでのアルパインクライミングを経て、ヒマラヤの高峰を…

日本人と神様の境界線

毎日、神社の前を通って駅に行く。 たまに朝も薄暗い時間に柏手を打ち、頭を下げる参拝者を見かけることがある。 今年は初詣も少なかったから、神様も聞く願いが少なかっただろうし、毎朝柏手を打てば叶えてくれるだろう(そんなこと書く私の願いは叶えない…

金の浪費と人生の浪費

給付金の再交付が求められているらしい。 去年配った10万円を使って何かをした人は少ないように思える。事実、家計の預貯金は上がったというのだから、経済効果はあまりなかったのかもしれない。 まあ思うことは他にもあるけど、ここでは止しておこう。 先日…

自然界とビジネス界のサバイバル~服部文祥と大前研一の本を読む

ここのところ読んだ本、もしくは読んでいる途中の本。 大前研一『考える技術』、『大前流心理経済学 貯めるな使え!』、『「国家の衰退」からいかに脱するか。』 服部文祥『サバイバル家族』、『岳人2月号-特集 服部文祥』、『狩猟サバイバル』 特定の筆者ば…

人工知能に仕事を取られたら~『人工知能は人間を超えるか』

人工知能にはわりと興味がある。 20年くらい前にさるプロ棋士が本業から人工知能研究者に変わったという話を聞いて、将棋ソフトと人工知能に興味を持った。 当時の将棋ソフトはアマチュアでも初級レベル。序盤は定跡を「暗記」しているので、まあまあの展開…

人工知能と騒ぐこと勿れ〜『AI vs 教科書が読めない子どもたち』

ちょっと今さらながら『AI vs 教科書が読めない子どもたち』を読んだ。筆者は新井紀子さんという数学者で、名前は「東ロボくん」で知っていた。東ロボくんは東京大学の入試を突破できる人工知能技術を可能かというプロジェクトで、センター試験から二次試験…

偏差値と登山者の自己矛盾

『岳人』の特集記事が服部文祥となっていたので久しぶりに買ってみた。 『サバイバル家族』を読んで、個人的にはさらなる服部さんブームである。 服部さんと私には接点も共通点も大してない。ただ、受験勉強の末、ギリギリで公立大学に滑りこんだあたりは同…

失言の森を進むには

丸谷才一のエッセイ集『軽いつづら』で日本の政治家は失言が少なくてつまらないという文があった。アメリカ大統領なんかはウィットを効かせようとして「その件は娘(10歳)に訊いてみるよ」と言い、誤解されて失敗なんていう話があって面白い。 一方、日本の…

都会の中のサバイバル~服部文祥『サバイバル家族』を読む

アウトドア派には共通する悩みがある。 「そんなに自然が好きなら自然豊かな田舎に住めばいいではないか」とも思うが現実はなかなかできない。アウトドアというのは所詮レジャーの一部だから、金銭を稼いではじめてできる行為である。農業や林業、狩猟などで…

大阪の実質主義はコロナ禍の日本を変えるか

年明けの報道番組で今回のコロナ禍について 「世の中が効率化ばかりを追い求めて余裕がなくなっている」 と指摘する学者がいた。 人類の歴史とは効率化の歴史であり、今後もその流れが変わることはないというのに、危機的状況になると突然逆の意見が登場した…

愛はお金で買えるものか

1月31日は「愛妻の日」らしい。I(アイ)、31(サイ)ということか。ダジャレで愛妻にプレゼントをせよということだろう。 基本的に何かの日というのは消費を助長するものであって、節約・倹約を謳うものは少ない。 愛はお金で示しましょうときた。 十…

「バカの壁」と「アホの壁」

OJTリーダー研修とやらがある。 OJTとは"On the Job Traning"。仕事をしながらトレーニング。さしあたって訳せば仕事をしながらトレーニングをさせる人のトレーニング。 早口言葉みたいだ。 事前資料を見ると『バカの壁』がオススメとある。 養老孟司『バカ…

『鬼滅の刃』で国語算数理科社会をやってみる

去年、妙義山を登りに横川の駅に行ったらコスプレの人がたくさんいた。 『鬼滅の刃』のイベントがあるらしく、子どもから大人まで、コロナ禍で珍しいくらいの人だかりである。 私はあまり漫画に興味がないのだが、子どもに人気ならこれを使って教材にしてみ…

外れ者の優等生

大晦日は久しぶりにボクシングを見た。 井岡一翔と田中恒成。別にどちらの肩を持つでもない。単に相方のじいちゃんが見たいというから一緒に見た。 試合はなかなかの熱戦で、つねんい前進しながら攻める田中。チャンピオンの井岡はガードしながらカウンター…

野宿がしたい!

ここのところ忙しくて何もできていない。「何も」とはテント泊などの屋外泊を指していて、今年は数えてみると8泊しかしていない。これが多いのか少ないのかという議論もあろうけど、年20泊以上していたこともあったので、かなり少ない。 かとうちあき『野宿…

バイリンガルになるのに早期教育は必要?

最近忙しくて洋書を読んでいない。 オーディオ台の中でインテリアと化していて、去年バンクーバーで買ったJon Krakauer"Into thin air"(邦題『空へ』)もモントリオール空港の乗り換え待ちで読んで以来止まっている。 このままではエヴェレストを目指した登…

体験の共有~テレビ vs YouTubeの戦いは?②

前回からの続き。 『ウェブはバカと暇人のもの』という本によれば、まだまだテレビのネタがネットに出ているだけとなっていた。 なるほどYouTubeやSNSという個人を主体とした媒体は、一部で話題になるばかりで全体を網羅しつくさない。私は「ヒカキン」や「…

テレビ vs YouTubeの戦いは?①

月曜の早朝、会社のあるビルに入るとドラマか何かのロケをやっていた。 「深津絵里がいたよ」 仕事を始めていたらそんな声が聞こえてきた。 ほほー、深津絵里とな。 とは言えそれほど興味はない。半年くらい前に「鈴木保奈美とすれ違った」と声高に言われた…

宝くじに当たったら不幸になる問題について

年末ジャンボ宝くじの時期である。 書いてはみたが、私は宝くじに全く興味がない。数学で言うところの「期待値」を見てから、なんだかアホらしくなってしまった。宝くじ1000円を買って返ってくる金額の期待値は300円程度。 なんで1000円出して300円のものを…

人生を真面目に生きることについて考える

去年からどうもずっと忙しい気がする。 梅が咲き、桜が咲き、躑躅が咲き、紫陽花が咲き、向日葵が咲き、金木犀が咲き、曼珠沙華が咲いていたと思ったらもう冬が間近になっていた。 どうやら私は"真面目"な奴と思われているのか、どかどか仕事が降ってきて、…

都会生活に疲れたら読みたくなる本

どうも疲れている。 週末の谷川岳のせいではない。登山ではとにかく前に進んでいる実感があるのだが、仕事なんかでは「動く歩道」を逆走しているような感覚に時折襲われて、ひどく疲れた気がすることがある。 そんな時によく手に取る本のご紹介。 ①野田知佑…

都会では孤独でいられない不幸について

谷川岳からの帰り道、大宮で乗り換えると西日の眩しい席にあたってしまった。慌ててサングラスをかける。 私の隣にいた女性はそんな西日に気を留めることなく一心不乱にiPhoneを操作していた。 西日を避けるため、私がふと俯くと、彼女の操作する画面が目に…

悩んだから山に行く〜うつと登山

先崎学『うつ病九段』を読んだ。うつ病になった将棋士の赤裸々というより真摯な闘病記だ。先崎九段というのは、若手時代から才気溢れ、トークも軽妙な、タレント性のある棋士である。棋士としては、タイトルこそ獲得していないが、NHK杯優勝、A級在籍と、ト…

登山と将棋の一か八か

久しぶりに北八ヶ岳に行った。山に行くのは先月の北海道以来で、ちょうど1ヶ月ぶり。 まあその話はまた別に書きたい。 今回山に携えた本は先崎学『フフフの歩』というエッセイ集。 藤井聡太くんの活躍で今話題の将棋界ではあるが、先崎学と言ってもピンと来…

生きるために食べるのか~映画「いのちの食べかた」~

ここのところ帰宅が夜の11時を過ぎる。この時間になるとのんびり食事をとる余裕もなくて、牛乳でも飲んでバタリと寝てしまい、あまり身体よくない。運動もほとんどしていないので、何だか家畜になったような心地がする。 いやこれが本当の「社畜」というやつ…

休眠登山者の本棚

本を買った。 図書館も閉鎖していて、週休1日状態で山にも行けない。山と読書は私にとってはセットで、ここ10年くらいはどちらかが切れると心の枯渇が起きてしまう。 そのどちらが深刻かと言えば読書の方で、定期的に文字を入れておかないと、怒りや苛立ち…

譬えの妙

「この前〇〇君と飲んだんだけどね。軽いね、彼。スナック菓子みたいに軽い」 同期入社の奴と昼食を食べていた時に出た何気ない話題だった。この話にウケつつも、「スナック菓子」という譬えは秀逸だなとやけに感心してしまった。 その〇〇君という男は、特…

時間どろぼう

忙しくてなかなか山に行けない。 山に行けないと精神的に問題が出るばかりでなく、肉体的にも大きな問題が生じる。早い話が、身体や感性が鈍って危険な目に遭いやすくなるわけで、先日も八ヶ岳で軽く冬山を体験するつもりが、指先を凍傷にしてしまった。この…