クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

アラビアのロレンスに見る間②

アラビアのロレンス」は前編が終わると、後編までの間に休憩が入る。スピード感重視の現代映画に比べるとなんとも悠長である。

前編は単身乗り込んだアラビアで現地のベドウィン族を率いてトルコ軍の都市アカバを奪い取るところで終わる。首長の白い衣装をなびかせて突撃する金髪、青い目のロレンス。

後編は、少佐に昇進し、さらにアラビアの軍勢を率いて列車を爆破し、トルコ軍に襲い掛かかる。それはイギリス軍としての要請ではあったものの、純白だった衣装は次第に茶色く汚れていく。

 

場面の背景やストーリーの解釈などは本職の映画評論家に譲るとして、前編に比べるとすさまじいスピード感で話は展開する。ラクダがのたりのたりと歩んでいたのが、猛スピードで突撃を始めたような感じだ。

ロレンスは、任務か、矜持か危険を冒して砂漠地帯に入りこみ、さらにトルコ軍のアカバを落とすところまでは実にゆったりとしたものだったのに、後半はあっという間だ。自分の道を切り拓くために大きな岩を転がしていたのが、一気に坂を下り始めたように思える。1人の人が死ぬシーンも前編が重々しかったのに対して後編はバタバタとあっけない。

この映画の舞台はおそらく長くても1年くらいだろう。しかし、せいぜい2週間ほどに半分を割いたのに対して後半に数か月が凝縮されるのは人生を象徴しているようにも思える。後半には間がほとんどなくなっていた。

 

さて、ロレンスは冒頭の場面、バイク事故で死ぬ。

これが仕事、軍務で死んだらたまらないが、あれだけバイクをピカピカに磨いているのならおそらくは趣味である。「死」から映画を始めると、何か悲劇性を感じるが、遊びで死んだのなら、まあ幸せな人生だったのだろうなと感じたのが私の率直な感想である。