クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

乗り過ごし伝説

金曜の飲み会後、久しぶりに乗り過ごした。

ビールとワインをしこたま飲んで解散かと思ったら「もう1軒行こう」となり、1杯だけハイボールを飲んだ。

特別快速に乗ってふっと気がつくと西八王子と聞こえて慌てて電車を降りた。東京行きがまだ残っていたので階段を上って反対側のホームに行った。

とりあえずよかった。

 

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これは関係ない。川内から熊本までの肥薩おれんじ鉄道

酒飲みと乗り過ごしは切っても切れない関係にある。というのも変だが、電車を使っていると誰しも経験がある。金曜の高尾駅なんかではタクシーを待つ列ができていて、それを当て込んだタクシーも列をなしている。

私が聞いた中で最も凄まじい乗り過ごしをやるのは通称クボタちゃんという20代のうら若き女の子である。身長150cmちょっとの小柄な体躯。東北出身の白い肌にぱっちりとした二重。私の好みではないがわりと可愛い子だ。

クボタちゃんは入社して最初の食事会(昼)で「好きなものは日本酒です」と公言する酒好き。奢ってもらえるということもあって飲み代よりタクシー代が高いなんてザラなんだ。

 

当時、横浜市の上大岡近辺に住んでいた彼女は、東京、新橋あたりで飲むと東海道線横浜駅に向かう。そこで座ったりすると危険で、気がつけば熱海となる。新宿、池袋とかなら湘南新宿ラインを使って逗子あたり。

それでは警戒して京浜東北線を使うと大船までで済むものの、警戒度が下がるためか乗り過ごしの確率がぐんと上がるらしい。

「大船くらいならもう慣れました。タクシーで5000円くらいです」

と言っていた。

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本文とは関係ないけど横浜氷川丸

 ところが横浜で無事下りてもそこで終わりではない。

 市営地下鉄に乗ってマンションの最寄駅まで行くわけだが、ここで乗り過ごすと湘南台上永谷に行く。これならまだいい。

しかしながら、午前0時を越えると地下鉄は電車がなくなるので、京浜急行線を使って帰ることになる。こちらの方が路線が長いので危険で、逗子や三崎口まで行く可能性がある。湘南新宿ラインの逗子行きから下りてまた京浜急行線で逗子まで行ってしまったら何をしておるかである。

その組合せがあるかはわからない。ただ、彼女はあらゆる終点を制覇していることは確かである。

 

今まで聞いた中で最長乗り過ごし記録は新橋で飲んでいて宇都宮まで行った話だ。

距離もさることながら彼女が住んでいるのは横浜である。なぜそんなことになるかと言えば、新橋で銀行関連の人たちとしこたま飲み、上野東京ラインを反対方向に乗ったらしい。

「私こんな感じじゃないですか。みんな面白がって飲ませるんスよね」

クボタというのは本名ではない。日本酒・久保田が好きと言うので、勝手に付けた渾名だ。どうやらこの時も日本酒を注がれるままに飲んだらしい。

しかし、彼女のすごいところは宇都宮のマンガ喫茶で夜を明かすと始発で自宅に戻り、シャワーを浴びて会社に出勤したことである。さすがに辛いらしく、階段をよろよろと上がっていたので、私が訊いたら教えてくれた。

 

乗り過ごしをやると気がついた瞬間は自己嫌悪に陥る。しかも次の日が仕事の場合、飲み過ぎで休むわけにもいかないという意識が働くので、意地になって出社したりする。その実、二日酔いだし寝てないしで辛いことこの上ないのだが。

まあそれでも1ヶ月か2ヶ月過ぎるとまたやってしまう人も多いだろう。

乗り過ごしには体力とガッツと学習能力のなさがいるようだ。