会津駒ヶ岳に一緒に行った人が「断食ダイエット」をやっているという。断食とは文字通り食を断つことだが、そんなことできるのだろうか。
聞けば、最初に3日間かけて高カロリーの油分や肉類を断つらしい。そして次の3日間は食を断つのだと。やった後は胃腸がスッキリして余分なものが身体から出て行った気がするらしい。
そう聞くとやってみようかと思ってみるが、他人が食っている横で空腹に耐えるのはなかなか苦しそうだ。
断食と言えば何か宗教的な雰囲気が漂う。
ブッダは菩提樹の下で断食して悟りを得た。そして、断食後にスジャータという女性からヤギの乳をもらい、口にしたという。イスラム教では日の出から日没まで食べ物を口にしないラマダンがある。イエス・キリストは断食の最中に悪魔が現れ、石をパンに変えてみろと迫る。
断食とは修行であり、食欲を打ち破ってこそ悟りを得られるのだろうか。いずれもダイエットというわけではなさそうだ。
千日回峰行を満行した塩沼亮潤さんは決して断食ではないものの、毎日お粥という状態で行に入っていた。標高差1355mの山道を48km。
単に毎日往復するだけでもすごいのに、食事はお粥。ほとんど断食に等しい。実際、タンパク質、カルシウムなどが不足して、爪が割れたりしたらしい。
聞くだに恐ろしい。
ずいぶん前の『岳人』では細貝栄という人が「断食登山」というので出ていた。わずかな食料しか持たず、長期の登山を行う。これもまた厳密には断食ではない。ただ、食わないで行動するのだから究極のエコロジー。
電気自動車を買って、得々とエコロジーを主張している場合ではない。食わずに動くのがエコなのだ。
最近は環境配慮の観点からビーガンが増えているという。
家畜を育てるには、飼料が必要となる。その飼料のエネルギー価に対して取れる肉は少ない。牛肉が最も効率が悪く、豚肉、鶏肉が続く。それなら飼料となる大豆を食べればいいというわけだ。
この手の取組みの最先端を行くアメリカではビヨンドミーツなどの代替肉(植物由来の人造肉)がマクドナルドなどでも出ているらしい。夕食にチーズバーガーを食べる国だが、この多様性が面白いところでもある。
アメリカでは断食ダイエットは流行っているのだろうか。
ところで会津駒ヶ岳に一緒に行った友人は断食ダイエットの話を聞くなり
「私には無理やわ」
と呟いた。
「山の前にはトンカツやろ」
この山行前に油分をたっぷり摂って来たらしい。私も同じく食の煩悩の塊。
断食はまだできていない。