登山にトラブルはつきものだ。登山は非日常を求めて行っているのだから当然とはいえ、当然トラブルは起きる。ただ、そうそう起きてもらっては困るのがトラブルである。
会津駒ヶ岳に行っていたその日、2つの山でトラブルが起きていた。今回は2つの事件について書きたい。
1つは浅間山。
我が相方は北海道で会った友達とそのさらに友達とともに山に向かった。メンバーは3人で、アメリカ人・中国人・日本人(相方)という構成。新宿駅で集合し、レンタカーで群馬に向かう。
ところがすでにトラブルは発生していた。6時半集合のはずが出会えない。ようやく落ち合うと7時を過ぎていた。
登山口を出たは11時。すでに日は高く昇っている。
浅間山は無雪期なら頂上まで片道3時間くらいの山だ。ところがこの日はまだ積雪は1m以上ある。さらに火山警戒レベルは2。人はほとんど入っておらず、足は積雪で沈む。足取りは遅々として進まない中、午後2時半、山頂から2kmのところまできた。
ここで相方は下山を主張した。出発が遅く、積雪で進まない。おまけに火口付近は立入禁止となっていた。命を賭ける山ではないし、どうせ頂上には行けないのだ。
アメリカ人は頑固だった。彼には百名山制覇の野心があるらしい。中国人の男の子は誘ってくれたアメリカ人の彼に任せるというスタンス。
相方は説得を諦めて独りで下山することにした。
宝剣岳は駒ヶ岳ロープウェイの下り場、千畳敷駅から正面に見える山である。駅は標高2612mで山頂は2931mで高低差は300m。5時間ほどの短い登山となる、ハズだった。
こちらの事情は当事者に会っていないのでよくわからない。とにかく結果的に頂上に着いた時には最終ロープウェイが終わっていた。そこから徒歩で下山すると、暗くなるのは必至だし、おそらく体力も残っていなかっただろう。
彼ら3人のパーティーは相談の上、極寒ビバーク、ではなくホテル千畳敷のラグジュアリー泊を選んだ。
浅間山の失敗はパーティーの力量がわからない状態で山行に行ってしまった。宝剣岳の失敗はパーティーが自分たちの力量を見誤ったことではないだろうか。
いずれにしても山と対峙する人の見極めが失敗した時に遭難は起きる。天候の急変や雪崩などは突発的な事故とも見られるが、それにしても見極めに失敗したことに起因する。要は見極める力量不足だ。
山の遭難は人災なのである。
そんなことを偉そうに書いておいて、次は私とも限らない。
遭難は人がいるから起きる。しかし、遭難を避けるためには山に行かないことしかできない。