クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

方言と感情の表現

相方が新任の挨拶でいきなり「方言で挨拶を」と振られたという。

職業柄、挨拶は慣れているようだが、いきなりは困ったようで、「クイズでもいいですか?」と訊き返したという。

そして

「『机ツってくださぁい』さてどういう意味でしょう?」

と出題したという。

関西出身の私は、東京にしばらくいたら、普段しゃべる言葉から方言が消えていた。東京は大きな「職場」なので、その中で話すのに方言は使いにくい。

イラつくと方言でまくし立てたくなるので危険だ。感情は方言に出やすい。「ナメとったらイテまうぞ!」などと職場で言ったら問題になるに違いない(もちろん関西でも問題になる)。

心の中では「なんでやねん!」とつぶやいていることもあるけど、言葉には出さない。口に出さない関西弁は主に感情の発露なので、それらを飲み込んでいるうちに日常で方言が出なくなった。

 

一方で他の地域に来ても方言の消えない人もいる。

大学時代、同じ学科には30人ほどの人数ながら北海道から鹿児島までいた。「何言いよっと?」(福岡)と片方で言えば「これ本当じゃけぇ」(広島)と返すという具合で方言の坩堝だった。京都の学校なので、京都府民が数人いた他は1都道府県あたり2人以上いないという分布で、東北地方と沖縄以外のエリアは揃っている。

鹿児島出身の子なんかは最後まで方言が抜けず、方言をからかわれても方言で言い返していた。

そんな4年間を過ごしてから関東に行くと、みんな標準語でやや気持ちが悪い。なんだか無機質な感じがするのだ。

ただ、今は私も職場ではほぼ標準語。「訛りないね」と言われる。感情的にならないためには標準語で話した方がいいというのが私なりの結論だ。

 

さて、先の相方のクイズだが、「机ツって」は「机動かして」ということらしい。

訛りで話し合う関係というのが、今は少し懐かしい。