クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

「アラビアのロレンス」に見る映画の間①

最近、プチ映画ブームとなっている。外出自粛、図書館閉館、本屋休業となればやることはなかなか見つからない。

登山・ランニング・自転車なんかを趣味にしている私ですら困るくらいだから、ショッピングや街ブラが好きな人は何をしているのだろう。閑散とした街を見ていると、映画の中のゴーストタウンのようで現実感がない。

 

ランニングから家に戻ってまた映画を見た。今度は一転してクラッシックなものとして「アラビアのロレンス」にしてみた。

アラビアのロレンス (字幕版)

アラビアのロレンス (字幕版)

  • 発売日: 2015/01/08
  • メディア: Prime Video
 

これは1962年の作品だからもう50年以上前となる。

この作品はとにかく長い。完全版だと227分もある。その前日に見た「6才のボクが大人になるまで。」も2時間半を超える作品であったのだが、こちらは3時間超えの大長編。劇場ではトイレ休憩があり、DVDは2枚組となっている。

もっともほろ酔いで見ていたので、自主的トイレ休憩は何度も入れたのだが。

 

冒頭は黒いシーンから始まる。これは比喩などではなく、本当に画面が黒くなっていて、バックにオーケストラだけがかかっている。

映像が始まって、ロレンスがバイクを手入れし、跨り、走り始める。そして向かいからくる自転車を避けようとして事故を起こす。

まあ一つ一つが非常に長い。

次に舞台はロレンスの葬儀、そして時を遡って第一次世界大戦へと進む。

 

この映画の特徴は遠景から向かってくる画が多いことだ。砂漠の彼方、陽炎の中にラクダに乗った人が徐々に近づいてくる。当然来るまでに長い間がある。さらに登場人物たちが話を始める。台詞も間が長い。今の感覚から言うと、台詞は不自然だ。間が長く、発音はやけに明瞭で、アラビア人とイギリス人ということを差し引いてもスピード感がない。アクションシーンのラッシュと大違いなのである。

どうやら、この壮大な歴史絵巻に酔いしれるには壮大なスクリーンと気持ちをタイムスリップさせるだけの時間が必要なようだ。

話は、第一次世界大戦中のアラビア半島オスマン・トルコ帝国が支配に反抗するベドウィン族は近代兵器によって徐々に追い込まれていた。イギリスは敵対する同盟国側に与するオスマン・トルコ帝国を背後から脅かそうと、ベドウィン族の支援に乗り出す。ロレンスは地図を専門に扱う諜報員としてこの砂漠地帯に派遣されることになる。

 

ロレンスは謎の男だ。彼を演じるピーター・オトゥールは金髪、色白、青い目だが、何を考えているのかわからない顔だ。

ロレンスはベドウィン族に入り込み、巧みに説き伏せて人員を調達し、彼らを率いて、トルコ軍の要所アカバの奪還に成功する。イギリスとしては同盟国側の後方を撹乱するといういみでは大いなる軍事的な功績を獲得し、ロレンスは少佐へ昇格し、前編はロレンスが栄誉に浴する場面で終わる。

しかしながら、ロレンスは砂漠で仲間を置き去りにされた仲間を決死で救出した時も、その仲間を自らの手で処刑した時も、アカバを攻め落とした時も、そしてその功績によって軍から賞賛を受けたときも同じ目だった。

それは青い、透明な、表情のない目だった。