クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

パンデミック・パズルド

「これはパンデミックだ!」

会社の取締役がそう言った時、「なんのこっちゃ」と内心思った。家にテレビもなく、最近は会社と家の往復で、本もろくろく読んでいない情報弱者なので、かなりノー天気な私ではある。ただ、そんなに差し迫った危機があるようにも思えないし、なによりも本当に生命の危機をみんなが共有しているように思えない。

ところが現実は私のノー天気には反して、マスク・消毒液の在庫払底に始まり、なぜかトイレットペーパーやら米の買いだめと周囲が慌ただしくなってきた。学校は休校、図書館は閉館、イベントは中止。会社ではウォーターサーバーの使用中止、扉の常時開放(ドアノブに触れないため)が宣せられ、効果不明の取り組みが次々と始められた。

 

今回の騒動は不思議だ。未知の危機に対して人間は弱いと言ってしまえばそれまでだが、それ以上に「危機感を持たなければならない」という妙な強迫観念が世間を覆っている。簡単に言えば「安易なことをして身近に感染者が出たらどう叩かれるかわからない」という考えが支配していて、現実のウイルスの実質の脅威は思考のどこかに置き忘れられているのだ。

実際、感染していた人がスポーツジムに行っていたというだけであたかもその人が犯罪者のように騒ぎ立てるのはやりすぎである。発症していなければ身体を鍛えようというのは当然の考えだし、ジムに行くほど元気なら感染など疑っていようはずもない。

 

パンデミックはウイルスが起こすのではない。人が起こしているのだ。