クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

西武園ゆうえんちのリニューアルと生駒山上ゆうえんち

 大前研一さんの「ニュースの視点blog」を見ていたら西武園ゆうえんちについて記事があった。

しばらく休園し、西武多摩湖線の駅名も「西武遊園地」から「多摩湖」に変わったと思っていたらリニューアルオープンしたらしい。コンセプトは「昭和レトロ」。昭和も歴史的過去として博物館か遊園地になるような時代になったのだ。

しかし、大前さんはこのリニューアルについてはヒットしないと一刀両断している。なにがしかの個性が要求される中で選んだ「昭和レトロ」は果たして吉と出るだろうか。

f:id:yachanman:20210614203950j:plain

西武園ゆうえんち近くの狭山公園

遊園地がディズニーランド、シーの独り勝ちになって久しい。豊島園もなくなり、今や元気なのは富士急ハイランドくらいだろうか。

関西の遊園地淘汰はある意味もっと激しい。近鉄あやめ池遊園地、エキスポランド奈良ドリームランドなどが立て続けに閉園となり、今はひらかたパークのみ。こちらもUSJの独り勝ち。

ところが関西には真っ先に潰れると言われながら生き残っている遊園地がある。

f:id:yachanman:20210615065752j:plain

生駒山上の名物飛行塔(冬季休園中)



それは生駒山上遊園地

関東の人は全く知らんだろうが、昭和レトロどころでない単なる昭和そのまんまの遊園地である。

しかも場所はスカイツリーと変わらない標高600mくらいの生駒山にある。当然アクセスはすばらしく悪い。

公共交通機関の場合、近鉄生駒駅からケーブルカー駅に行き、中腹の宝山寺駅に向かう。このケーブルカーは日本最古という由緒正しき乗り物なのだが、今から20年くらい前になぜか犬と猫のぶっ飛んだデザインにされてしまった。山上に辿り着くにはさらに宝山寺駅からケーブルカーを乗り継ぎ、今度はなぜかケーキ型の車両でようやく遊園地に着く。

ちなみに冬は雪が降ることもあり、休園する。アクセスも稼働率も頗る悪いのだが、各地で遊園地が閉演する中なぜか生き残っている。

f:id:yachanman:20210615072453j:plain

これは小金井の江戸たてもの園、結構面白い



まあビジネス的にどうか、儲かっているのかはわからない。しかし、あまりに緩すぎる乗り物やアトラクションで、ひところ人気になったらしい。写真の飛行塔なんかは決してお客を振り回すわけでなく、極めてゆっくり回る。お手玉みたいな袋を投げる的当て(ジュースの缶を倒すとジュースがもらえる)。急流すべり。お化け屋敷。

世間が富士急に代表されるような絶叫マシンに向かっていた時代、この山上遊園地も絶叫系を入れていた時代もあったのだが、結局は園児でも楽しめるものだけが残った。

こんな話を持ち出して何が言いたいかというと、作られた世界では設計者の考えた以上の感動を来園者に与えることは難しい。そうなるとディズニーやUSJのように資金力に物を言わせたアトラクションが勝つのは目に見えている。

ローテクの少ない資金力で最大限に楽しませるためには、来園者がそれぞれ新しい楽しみ方を発見できる仕組みにしなければならない。作り物の世界は一度は面白くても二度目に飽きる。

西武園ゆうえんちは100億円の資金を投じてリニューアルしたという。

来園者が設計者の意図を超えて遊ぶことができればリニューアルは成功するだろう。ただ、押し付けのエンターテインメントになれば長続きしない気がしている。