忘年会シーズンである。
まあ去年から忘年会がなくてホッとしているのは私だけではないだろう。「〇〇部長にお酌をせねば!」とビール瓶を持ってソソっとすり寄ったり、「△△専務の飲み物が残り少ない!」と注文に走ったり。
日本の宴会というのは「年忘れの息抜き」というより、「酔っぱらっても仕事ができるのかの鍛錬を見せる場」というのが正確だろう。
酒は気の置けない仲の間柄でしっとりと飲むに限る。大酔せず、美味いと思う酒をちびりちびりとやる方が最近はいい気がしている。
さて、ちびりちびりとやるには何がいいか。
大酒をしないなら日本酒がいい。特に登山をやるなら山名を冠した酒がいいということで、ちょっと書いてみたい。
①八海山
かつて新潟出身で日本酒好きの女性の先輩が会社にいた。飲みに行くと必ず新潟の酒を選んでいてずいぶんと郷土愛が強いなあと感じた。その時、一番飲んでいたのが八海山である。
私も付き合って飲んでいた。「酒は米どころ」という彼女の主張に押されて、以降はこの八海山が味の基準になっている。したがって、私の中では甘くも辛くもないスッキリとした味としか言いようがない。
ちなみにまだ八海山には登っていないので登って下りてからちびりちびりとやってみたい。
②生駒山
なんでこんなマニアックなものをと言われそうだがお許しいただきたい。私が幼少期から最もたくさん登った山である。
知らない人のために説明すると、生駒山は大阪府と奈良県の県境にまたがる600mくらいの山で、天気の良い日は大阪の夜景もきれいなスポットである。頂上には生駒山上遊園地があり、テレビ塔や携帯電話のアンテナが林立していて、風情は全くないが、大阪と奈良の人間からは駅からハイキングができる山として親しまれている。
風情はないものの、「生駒」という名称は聖徳太子に由来する。聖徳太子が奈良県側の生駒を通った時、ここで乗馬が死んでしまい往生した。そこで太子が仏に祈りを捧げるとたちまち馬が生き返り、旅を続けることができたという逸話による。
前置きが長くなったけど、実家から「生駒山」という日本酒が送られてきたので飲んでみた。
感想は少し甘め。ただスッキリ感は足りないかな。ちょっと舌に残る味が今一つ。
率直な感想としては、不味くはないけど八海山の向こうを張るインパクトには欠ける。まあ生駒山が庶民の山ということを表現しているな気もする。
③七賢 甲斐駒
最後はまだ飲んだことのない日本酒。
先日、大月から三島への自転車旅の途中で酒屋に寄った。地元の銘酒はないかと探したら、普段からよく飲む七賢が並んでいる。近所のスーパーで720mlを1000円未満で買える酒なのだが、スッキリ辛口にほのかな甘みで気に入っている。
酒屋のケースにはまだ飲んだことのない3種類の七賢があった。どれにしようか迷う中で、最高額を付けている「甲斐駒」が気になる。他が1000円くらいなのに対してこれだけ2000円超。甲斐駒は夏、秋、冬で計6回登った思い出の山。
うーんと唸って結局は1300円の七賢に。
家に帰ってからもう一つ七賢 生酒を近所で見つけて購入したが、「甲斐駒」はなかった。ないがゆえに余計に気になる。
どんな味かわからないが、今のところ私にとって幻の酒となっている。