昨日、山でのプチ遭難について書いた。
今年は梅雨明けするかしないかという時期からカッと暑くなったせいか、疲労による遭難が多い気がする。天気が良いから登山を決行するものの、暑さで疲労が溜まっての事故という種類のもので、これが天候不順なら行かないだろうし、曇りなら疲労は少ないだろう。晴れていると欲張った計画になりがちなのもあるかもしれない。
ただ、私も他人のことを言えたものではない。本格的な遭難事故はやったことはないけど、ニアミスくらいはある。「他人のふり見て」ではないが、自己の戒めとして過去のプチ遭難を振り返ってみよう。
麓はもう春。山は残雪期と言っていいくらいで、風は時折冷たいものの登りはシャツ1枚で十分な状態だった。白毛門までは基本的にグワーッと上がる道で、傾斜が急な以外は難しいところはない。
そんな中で、1ヶ所岩場を巻くところがあった。と言ってもクランポンで石の上を多少ガリガリ言わせながら登るだけで、なんてことはない。そのなんてことところで事件は起きた。
岩の上で屈んで小さな段差を下りて足を伸ばそうとした時、背中のバックパックが急に後方へ引っ張られた。何が起きたかわからないうちに私は見事、後方へぐるりんと回っていた。そして下に生えていた灌木の上に頭から落ちていた。
一体何があったか。
その時、私はバックパックにはピッケルを外付けしていた。そして、ピッケルには丈夫なリューシュが付いており、それは括ってピックに付けてはいたのだが、歩いている間にほどけてバックパックの下にぶら下がっていた。それを屈んだときにクランポンで踏んでしまい、立ち上がろうとした瞬間、バックパックがピッケルごと引っ張られて後方回転してしまったというわけだ。
落下したのは灌木の上でふんわり受け止めてもらったおかげて無傷で済んだが、下が崖だったり岩だったら大怪我だっただろう。
また、3年前、奥多摩の水根沢に行った時の話。
正面突破できず、懸垂下降しながら引き返そうとした。懸垂下降はロープを伝って下りる技術で、基本中の基本ながら、事故が多いことでも知られる。
この時は滝を迂回するために懸垂下降をした。そして、いくつものミスの結果、滝に打たれて死にそうになった。
まず、ロープが短すぎた。通常、下降には最低30mいるところを20mのしか持っていかなかった。さらに短すぎて下りる滝の長さのギリギリになっていた。そして、長さが足りない上に下降器にロープが噛んで外すことができず、ロープと支点に結び付いたまま滝に打たれてしまったというわけだ。
これら自分でもアホみたいなんだが、遭難なんてこういうものなのだろう。
死ぬかもなんて思いもしないところで、そういう目に遭うものなのだ。
遭難の記事を見る度に、自分もこうなるかもしれないと思っている今日この頃である。