クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

遭難を防ぐには何が必要か

かつて会社の研修で、ビジネススクールの講師から

「登山に必要なものは?」

と訊かれたことがある。私が登山をすると知ってのことで、リップサービスのつもりだ。そして訊かれた私はこう答えた。

「体力です」

身も蓋もない回答でその話はそれ以上膨らまなかった。そりゃそうだろう。体力が必要だなんて山登らなくてもわかる。

講師は、判断力とか決断力とか、とにかくビジネスと結びつく答えを期待したのだろう。

長野放送あたりのニュースで連日遭難事故が報じられている。

昨日見たニュースでは、65歳女性が中房温泉から入山して槍ヶ岳を経由して南岳に向かったところ、横尾尾根で道迷いで保護されたというもの。

行ったことのある人ならどのくらいの距離感かわかる。中房温泉から入山すると燕岳までの急坂を登り、さらに大天井岳まで縦走し、険しい東鎌尾根を経て槍ヶ岳に至る。そこから南岳に向かったということは次に大キレットを目指したのだろう。

なかなか凄い計画だ。

では、この遭難の原因は何だったかというと報道だけではよくわからないのだが、結局は体力だったのではないだろうか。迷ったということは霧か何かで道を見失って下ってしまったのだろう。そして迷ったのに登り返さなかった。登り返す体力が残っていなかったのだろう。

判断力も決断力も体力が前提となる。まさに「元気があれば何でもできる」、「元気がないと何もできない」というわけで、引き返すのも億劫になると危ないと言える。服部文祥さんはへばって判断力を失った状態を「でくの坊化現象」と書いていた。

登山もビジネスも体力が原資なのだ。

 

まあ、私も人もことを言えない。

先日の笠ヶ岳では結構へばってしまった。山で遊ぶためにはもっと体力が必要だ。