三島に着いたのは午後4時頃だった。ホテルのチェックインは5時を予定していたのでちょうどいい。これ以上遅ければあたりは暗くなっていただろう。
三島は気になる街だった。ずいぶん前にメレ山メレ子さんのブログ「メレンゲが腐るほど恋したい」に水の街として掲載されていて、街を流れる清浄な流れと鰻が名物と紹介されていた。
自転車で富士宮からたどり着くなら、三島より漁港のある沼津ということも考えたのだが、三島を旅のゴールとしたのは水の街というイメージに魅かれたからである。
三島に着いた初日、とにかく晩御飯は鰻にしようとなった。
私なんかは鰻を数年に一度食するかどうか。穴子を「これは鰻だ、これは鰻だ!」と自己暗示にかけて食するくらい。
一方の相方は幼き日より「私は蒲焼きより白焼きが好き!」とのたまうくらいの方なので、たまには食べたいと言う。泊まったホテルのすぐ横にいい感じの店があったので、「準備中」の札がかかっているのを承知で開けてみた。
準備中とあるから夜の営業もしているのかと思いきや、若い店員さんによればもう閉店するという。テイクアウトならまだ対応するということで、急遽お願いすることにした。
特上うなぎ重は5000円、上うなぎ重は4000円、並は3000円とあって、鰻丼は2000円。せっかくなのでとも思ったが、結局は一番安い鰻丼にしていた。
鰻には関西風と関東風がある。
関西風は腹開きでそのままクリスピーに焼いたもの。関東風は背開きで一度蒸焼きにしてから焼いている。北大路魯山人が、「関西人が関東風を脂が落ちてしまって不味いと言うのは本当に美味しい調理の仕方を知らないからだ」と書いていた。
今年は相方の実家で関西風を食したのだが、三島の鰻は関東風の焼き方だった。なるほど関東風のこの鰻も美味い。脂が適度に落ちてフカフカ。鰻の旨味がギュッと詰まっているような気がした。
翌日は昼から雨予報。なんとか昼までに観光しておこうと自転車を走らせる。
まずは三嶋神社へ。大きな池に鯉が大量。覗き込むと「餌をおくれ!」と顔を出す。よほど人ズレしているのだろう。
ニゴイは汚染された水でも強いので清流指標にはできないのだが、それにしてもやけに大きな個体が多かった。
ニゴイはともかく水の街なので、自転車を走らせ清流公園などをはしごする。
水際や水の中の飛び石を歩けるところがあって面白い。こうなると自転車というのはかえってネックで、いちいち自転車を下りて水辺を歩いて自転車を回収するということを繰り返す羽目になった。
最後は駅近くの白滝公園をぶらぶら。ここの祠を覗くとなぜかおばあさんがたくさん詰まっていて、少々不気味だった(失礼!)。
どこもかしこも水辺の面白い景観なので全部回れなかったのがちょっと心残り。
三島を去り際、
「あんたたちどこから来たの?」
と地元のおばさんから訊かれた。
「東京です。自転車は大月からですが」
と答えると。
「Enjoy!」
と言われた。