宮古島に行く前に相方が面白い話を披露してくれた。
ハンバーグはモンゴル帝国によって生まれたのだという。モンゴル人がヨーロッパ遠征を行った際に馬肉を生食する「タルタルステーキ」が伝わった。それが「生食はちょっと...」ということでドイツでミンチを焼くハンブルク・ステーキ、つまりハンバーグになった。
一方、モンゴル人は東アジアの果てで、高麗を滅ぼした。その際に伝わった肉料理は現在「ユッケ」として知られている。
しかし、極東の島国である日本に生肉を食べる文化は伝わらなかった。それは元寇によりモンゴルの侵攻を食い止めたからである。
さて、宮古島最後の夜、飛行機は19:50というとんでもない時間に出発する便を取ったので、空港で食べることにした。空港なら何かあるだろうと高を括っていたのだが、空港内にあるレストランの1つはすでに閉店。開いているのはファストフードのA&Wと立ち食いそばのみ。最後にソーキそばを堪能しようとしたのに残念だ。
ハンバーガーなんてどこでも食べられそうなものだが、沖縄限定というA&Wに入ることにした。
A&Wの日本第1号は1963年。沖縄の本土復帰は1972年だからアメリカ占領下だ。
マクドナルドの1号店は1971年というから日本でほぼ最初にハンバーガーを食することができたのは沖縄ということになる。
ハンバーグの歴史から遡ると、モンゴル人が鎌倉時代に持ち込めなかったタルタルステーキがハンバーグへと変化し、アメリカに渡って1904年のセントルイス万国博覧会でハンバーガーとして売り出され、第二次世界大戦後の沖縄に伝来。
なんと地球を反対に回ってやって来た料理というわけだ。
そんなA&Wを感無量で食したわけだが、特筆すべきことはほとんどない。
まあまあ美味かった。マクドナルドの一番安いのよりは肉厚でなかなか。値段は少々高くて、セットだと1000円くらいしてしまう。
ルートビアはA&W特有のドリンクで、いわばコカ・コーラみたいなものだ。ビアと言うけど、ノンアルコール飲料で、試しに頼んだら「甘いサロンパス」みたいな味がする。誇張ではなく本当にサロンパスのような薬剤的匂いのする飲み物。お替り自由ということらしいが、これは1杯で十分。
癖があるというか癖だらけで、甘い薬、小児用風邪薬みたいだ。
これまた歴史を紐解くと、アメリカ・禁酒法時代、アルコールを飲めない代わりにソーダ・ファウンテンというのが流行した。アルコールの代わりに炭酸飲料を飲んだわけで、今で言うところのエナジードリンクである。薬っぽいのも飲むと元気になるというものだから「良薬は口に苦し」である必要があったわけだ。
ソーダ・ファウンテンの末裔は他にかの有名なコカ・コーラがある。つまりコカ・コーラもルートビアも由来は同じなのである。
食に歴史あり。料理に歴史あり。何気ない食べ物も紐解くと面白い。