夏休みの翌週は名古屋で法事があった。このところ名古屋に行くことが多い。
現在、名古屋に住む相方の祖父がこんなことを言っていた。
「もう名古屋に住みだして20年になるがいいところだよ。しかし名古屋は田舎の都会だな」
「野暮ったい紳士」みたいな形容矛盾の評し方だが、相方も「そうだよねー」と相槌を打つ。相方も一時は名古屋市内に住み、地元の友人に名古屋出身者がいる。
一方で92歳の祖父は江戸っ子。20年前までは東京の会社勤め。東京に比べたら名古屋は小さい。ただ、「田舎」とはどういうことだろう。
まず言えることは、名古屋人は名古屋が好きだということだ。
喫茶店でモーニングを食べ、鰻を食うならひつまぶしにし、応援するならドラゴンズで、目指すは名古屋大学なのである。
相方によれば名古屋出身者は地元を出ても戻る傾向が高いという。地元の友人に「なんで戻って来ないの?」と不思議がられるそうだ。私は関西出身で、こんな疑問は聞いたことがない。
ここからは私見。
名古屋の名物グルメを見ると、特別美味いものではないものが多い。八丁味噌、ういろう、ひつまぶし、味噌カツ、手羽先、きしめん。
不味いとは言わない。ただ、トンカツは味噌で食べなくてもソースでいいし、きしめんでなくとも讃岐うどんでもいい。先日、鰻を頂戴した時も愛知県出身の1人を除いてみんな普通の蒲焼きで食べた。
ここの名物は地元民が食べる名物であり、他の地域に進出しないという傾向にある。今や讃岐うどんは全国区なのに、きしめんは相変わらず名古屋にとどまっている。大阪のたこ焼き、お好み焼きほど浸透した名古屋名物はない。
どうも名古屋人の流動性の低さを示しているように思える。
それでも名古屋は大都市。
哀愁の岐阜県や奈良県とは違うのだ。愛知県は天下取りの三英傑が揃い、世界のトヨタのお膝元、天下の名城・名古屋城には金の鯱が光る。
ただ、名古屋の自慢というのは内弁慶的だ。地元だけで盛り上がる傾向にあるような気がする。派手な嫁入りトラックや菓子まきで有名な結婚式もあくまで自分の周辺向け。「東京で人気」という店が名古屋に進出して来れば、最初だけ人が殺到して、あとは見向きもしないのだとか。
相方の父(豊橋出身)が「名古屋の食べ物は、八丁味噌、味噌カツ、あんかけスパゲティ、ひつまぶし。ブラウン・コンプレックスなんだな」と自嘲する。
奈良出身の私としては名古屋を嗤うことはできないのであるが、なんとなく「田舎の都会」に納得して帰路に就いた。