袁世凱は清王朝末期、軍閥の総帥で、辛亥革命後に中華民国の初代大総統となった人物である。本国中国でも日本でもなぜかあまり評判は良くない。清朝末期のどさくさに漁夫の利を得たように権力に座に着いたように見えるからだろう。
毀誉褒貶の激しいこの人物の実際を辿るのが本書である。
ざっくりと書いてしまうと、朝鮮半島での騒擾や列強の進出などで揺れる清王朝の中で、常にキーマンになっていたのが袁世凱だったようだ。しかし、それは必ずしも彼が狡猾に立ち回ったからというのでなく、「なんとなく」そういうポジションになっていたという。
歴史が面白いのは、必ずしも英雄が知略武勇で築き上げているわけではないことだったりする。一人の人物が行うことというのはたかが知れていて、意外といろいろな人物の思惑が重なって「なんとなく」こうなっちゃったというケースが多い。
歴史学はあくまで科学的に歴史的現象を分析するものだから、歴史小説好きからすると物足りないかもしれない。
ただ、私なんかはスーパーマンが歴史を作っているのではなく、標準サイズの人物たちが歴史物語を織りなしていることに面白みを感じてしまう。