ここのところ休日はランニングをして図書館で本を借りて読むという日が続いている。今、借りている本だけで積み上げると40cmくらいになっていて、期間内に読み切るか不安である。
まあ、タダで借りているわけだし、1度返してまた借りればいいのだけど。
今読んでいるのは岡本隆司『日中関係史』。互いに理解し合えない隣人、日本と中国を通史的に解説した本だ。
面白いのは両国の「本音と建前」で、中国の方が厳密な建前がある。天子と呼ばれる統治者は世界に1人であり、「日出処の天子」を名乗るなんてもってのほか。隋の煬帝が不機嫌になったのは当然なのである。
しかし、この空気の読めない隣人を無視するのかと思いきや、実利面(おそらく朝鮮半島情勢を考慮して)を見て返書を出している。
このあたり中国の皇帝は慈悲深い名君なのだ。
時代を下って明なんて面白い。
開祖である洪武帝が貨幣経済を否定し、現物主義を打ち出す。そうすると後に続く皇帝はどう現実が変わろうとも方針変更できない。このあたりは日本の江戸時代も似ている。家康公の祖法によって質素倹約、米中心の現物主義を取っている。
ところが、建前を現実に合わせる調整プロセスが異なる。
明はあくまで建前にこだわるものの民間では貨幣経済に移行するので、ついには密貿易がまかり通ったり、倭寇が暴れたりで体制の崩壊へとつながった。
江戸幕府はどうかと言うと、原則を知りつつもうやむやになっていった結果、300年もの長い治世となったのである。
まあ、これはどっちが良いとかいう問題ではなく、歴史の過程で固まったものなので、仕方ない。
かつて、仕事でイギリス人の投資アナリストが「中国はよくわからないリスクが多い」という話を聞いた。西洋世界からすると東洋の「本音と建前」は理解しがたいだろう。
ずっといる隣人だからこそ日本が理解する努力を怠ってはいけない気がする。