クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

カナディアンロッキー紀行⑧ーカナダ料理事情(続)

カナダは意外なほど多民族国家だった。バンクーバーから乗るスカイトレインの乗客は半分くらいが中国系で、立派な髭を蓄えたインド系の人もいる。特にバンクーバーは香港返還の際に移り住んだ人が多く、'Hong Kong-couver'と呼ばれているらしい 。
アメリカも多民族国家とは呼ばれるが、カナダとはかなり趣が違うようだ。アメリカはいくら多様性や平等を謳っていても、WASP(White,Anglo-Saxon,Protestant)の優位は未だ明らかだ。日本に比べてはるかに人種差別に過敏になるのは、自由と民主主義の国のある種の「偽善」であると言える。
一方、カナダにもホームレスはいたものの、ほとんどが白人でアメリカと比べると不思議な感じがした。空港の国内線も中国系の人たちは概ね豊かな感じがしたし、カルガリー空港で話しかけてきた中国系カナダ人も「日本人か?日本には3回行ったことがあるよ」と言っていた。彼の落ち着いた話しぶりを見ても、かなり裕福で教養のある感じだった。
カナダは、アメリカのような建前上の人種間平等ではなく、よりフラットな立場で各人種が存在しているように見える。
 
 しかし、ここではそんな小難しい話をメインにするわけではなく料理の話である。すっかり前置きが長くなった。
カナダは異国料理が美味い。正式なカナダ料理というものがハッキリしない以上は、もはや料理は本国と異国を逆転させた方が良いのではないかと思う。さまざまな人種が集まる中で、料理として生き残っているのだから、カナダには究極のエスニック料理があるのかもしれない。
今回の旅行では限られた回数しか外食をしていないものの、食べたのは全部異国料理だった。

バンフで食べたのはギリシャ料理野田知佑さんの本に「ギリシャ料理は世界で一番不味いと思う」と書いてあったので、かなり身構えていた。
1つのプレートに載ってくるのが特徴らしく、写真は牛肉と野菜の煮込みにジャガイモとご飯の組み合わせ。薄味の上品なスープで、肉も柔らかくて美味かった。

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もう1つ頼んだ料理はサーモンとトマトソースの組み合わせでこちらも美味。サーモンはカナダの名産なので、本家ギリシャ料理ではなく、この店オリジナルかもしれない。
レモンごと豪快に焼くのがギリシャ風なのか。焼いた意味はあまりないような気がするが全体的に美味かったのでまあいい。

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バンフからは帰国すべくカルガリーに戻った。カルガリートロントバンクーバーと並んで大都市で、カナディアンロッキーの街、キャンモアやバンフにいたので少々クラクラした。その日は空港からバスでダウンタウンへ向かい、旅の最後に外食した。
まだアルバータ牛を食べてないのでいろいろ検索してみたが、なかなか金額が張る。本格ステーキとなると日本で焼肉を食べるのと変わらず、なんだか微妙な気分である。
結局選んだのは中国風なのか、韓国風なのかわからない多国籍料理店。店名も’Foreign なんとか’だ。入口に立つ赤いおじさんは何者なのか気になる。写真ではわからないが、細身でニッカリ笑った姿で、中途半端な前傾姿勢はお辞儀なのか恫喝なのか。あんな人が接客に来たら怖いだろうな。

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 それはともかく、目的のアルバータ牛を使った料理は美味かった。脂身は少ないものの、柔らかくて味はしっかりと沁みている。
ところで、どこが多国籍かと見れば、中央に鎮座する白く四角いのは大根キムチで、その下にはマッシュポテト。組み合わせは珍妙だが、野菜と肉のバランスは良くて満足である。

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カナダでは外食と自炊もどきを交互にしたので食傷にはならなかった。もしピザやハンバーガーみたいなものが連続したら耐えられなかっただろう。
ただし、現地のCanadianがimmigrantsの国と言うくらいで、日本・中国・韓国からフィリピン、インドまで、さまざまな調味料は手に入る。日本ならキッコーマンの醤油やサッポロ一番は普通のスーパーにあった。
先の料理事情にも書いた通りアジアの味覚が楽しめる。「味はアジアなり」なのだ。

カナダの大自然と大都市の国だ。交通機関はかなり正確で、バスも定時にやって来る。その一方、一歩街を離れると手付かずの自然が広がっている。ギャップの大きい国なのだ。
料理についてもギャップが大きい。アメリカのジャンクな味、イギリスの素っ気ない味から、アジアの風味やスパイスが混じって不思議な味わいを出している。

「日本では少子高齢化が問題になっている」という話題になったところ、カナディアンは「カナダは問題ない。immigrants を入れるから」と答えたらしい。
なるほどカナダの料理がそれを証明している。

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