クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

カナディアンロッキー紀行⑥ーカナダ料理事情

旅の楽しみにはいろいろある。これまで見たことのない景色を求めるという旅もある。単に日常を離れてのんびりするという旅もある。あるいは人との交流を主にする旅もあるだろう。

ただ、食の合わない旅は不幸なばかりだ。

 

久しぶりの海外旅行であるが、行きのAir Canada機内食を食べた時点であまり期待しない方が良い気がしていた。機内食のDinner は牛肉か鶏肉の選択で、最後尾に座っていた私には鶏肉しか選択肢がなかった。メニューは以下の通り。

・マカロニサラダ

・鳥南蛮

ブロッコリーとニンジン一切れずつ

・ご飯

・パンとバター

・チョコレートケーキ

これらをおもちゃみたいなフォークとナイフを駆使して食べる。ご飯にパンが付くあたりがメニューとしての完成度をうかがわせる。味は不味くもないけど美味くもないくらい。ただ、地上10000mでわざわざ食べる代物ではない。

ビジネスクラスのメニューは全く違うんだろうな。

 

機内食をカナダ代表に仕立てるのは大変申し訳ないところではある。しかし、カナダ料理とガイドブックを見ても、Fish and chips やアルバータ牛、クラムチャウダーなんかで、イギリスやアメリカと内容はほとんど変わらない。カナダ料理というものはそもそも実体がないものらしい。

 

そんなカナダに行って美味かったのはサンドイッチだった。またしてもイギリス発祥のものだが、パンは日本で売られているようなしっとりとした食感ではなく、茶色でボソボソとした歯触りで、穀物を噛み締めるような感触である。中に挟まれているのはターキーのハムだったり、ビーフだったりいろいろあるが、どれも噛みごたえがあり、胡椒の効かせ方が非常に上手である。肉の国の真価が発揮されていると思う。

あとはラザニアやピザなど、アメリカと共通した料理は口にしたものの、チーズは肉同様に日本より美味いかなくらいにしか思えない。何より味が濃いくせにケチャップなどの単調な味付けなので、すぐに食傷気味になってしまう。

 

カナダ滞在の計13日間で、夕食をレストランなどで食べたのは3回。内訳は

・インド料理

ギリシャ料理

・多国籍料理(洋風に少しアジアアレンジ)

なんだカナダじゃなくても食べられるではないかという意見もありそうだ。しかし、カナダはimmigrant(移民)の国なのである。バンクーバーなんかは中国系、インド系、フィリピン系なども多くて(香港や台湾系の人は中国と一緒くたにされるのを嫌うらしいが)、それぞれがオリジナルの料理を持っている。

 

今回、カナディアンロッキーの麓、キャンモアではインド料理を食べた。ホウレン草のカレーとタンドリーチキン。日本でも食べられるではないかという批判はともかくスパイシーで美味しかった。

客は私たちともう1組だけなので、店員のお姉さんが何かと話しかけてくる。

「どこから来たの?」

「日本から」

「へー!行ってみたいわ。親戚で日本に住んでる人がいるわ」

こちらは店員が話しかけるのがサービスの1つとされているらしい。店員は注文の品を持ってきてしばらくすると、必ず「味はどう?」と訊く。不味かったらどう答えたらいいのだろう。

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ちなみにこの次の日はスーパーで中華の惣菜を買ってみた。春巻きや焼き飯、焼きそば、酢豚風のもの、野菜炒めなんかがあり、自分でケースに入れてレジに持って行くと重さを測って値段が決まる。

春巻きは八角の香りがして日本のものとは少し違う感じがしたが、それはそれで美味かった。焼き飯、焼きそばは薄味で、少し意外な感覚がしたものの、濃い味の料理が多いのでありがたい。酢豚風の肉類は甘辛い味で、少し酸味が欲しい日本人には物足りないかもしれない。

 

やはり世界の人口1位と2位は伊達ではないということになってしまう。イギリス帝国主義が食にこだわらないことで世界を席巻すれば、中国、インドはどこでも安定の味と人口で世界に広がるのである。

案外、カナダの料理事情は世界の覇権を集約したものになっているかもしれない。