日本にもいよいよ冬が来た。今年は10月にカナダのキャンモアで前日プラス10℃から翌日マイナス10℃を経験しているので変な感じがする。私は暑がりで寒がりというわがままな身体をいるので大変だ。冬山は特に大変で、登り始めは寒く、徐々に身体が温まり、ちょうどいい具合になったくらいにテント場に着き、テントを張りながらまた凍えるというようなことを繰り返している。
寒いときに重要な防寒着はアンダーシャツとダウンである。アンダーシャツはメリノウールと化繊の両方を使ったことがあるが、この違いについてはまた気が向いたら書いてみたい。今回は停滞時に重宝するダウンジャケットについて徒然なるままに綴ってみた。
1.mont-bell アルパインダウンパーカ800
最初に使った防寒ジャケットはモンベルのサーマラップジャケットだった。表面の生地は薄くて丈夫なバリスティックエアライト、中綿はエクセロフトという化繊綿で、ダウンほどではないけれど軽かった。サーマラップジャケットは袖や首回りが擦り切れ、ジッパーが噛んだ部分の生地が破れ、ジッパーの先の紐がちぎれるまで使った。矢尽き刀折れるまで戦ったというのはこのことだろう。
ただ、サーマラップにも不満があって、何より厳冬期にテント泊をするなんていうシチュエーションでは明らかに寒い。テントを立てるなり寝袋を出して潜り込むしかなく、寝袋に入るともう出たくない。せっかくの絶景も寒さには勝てず、これでは何をしに来たのかわからない状態となっていた。そんなこんなで次は暖かいものにしようと心に誓ったのだった。
コスパと暖かさを考えた結果、モンベルのアルパインダウンパーカ800を選んだ。サイズは大きめのLサイズ。モコモコである。
使ってみて雪山では最強の暖かさだった。これより暖かいモデルは極地用や持ち運びを前提としない大重量の製品なので、軽くて暖かいという意味では最も良い。値段も1万円台の半ばで、800FPというスペックも申し分ない。
ポケットは両脇腹に2ヵ所ととともに、ジャケット内部の脇腹付近には大型ポケットがあるのが特徴で、薄手の予備手袋などを中に入れておくのに重宝した。
たまに入れたことを忘れてワタワタ探し回ることはあったが。
規格は全体的に大振りで、腹部はわりと大きい。私の場合はアウターの上から着ることが多い。格好は悪いが、アウターを脱ぎ着しないので寒くならない。テント場に着いたらすぐに着て、ピークハントの時は歩き始める直前に脱ぐ。これなら身体が冷えない。
ちょっとデザインには不満はあるもののなかなか活躍している。今はめちゃくちゃ寒い日の通勤、年に一度の大雪の時に街中で使うことが多い。
2.MAMMUT ダウンジャケット
モンベルのもこもこダウンは気持ちよかったものの、大いなる欠点があった。
オジサンくさいのである。買ってすぐに意気揚々と着て新幹線に乗ると、50くらいのオジサンと完全にカブってしまった。色もサイズもまったく一緒。オジサンには申し訳ないのだが、ガッカリである。
この商品の名誉のために言うと、品質は素晴らしい。ダウンの質も生地の軽さと値段のバランスは最高だ。この価格でこのクオリティは他のメーカーにない。しかし、色とシルエットはなぜかオジサンなのだ。
そんな思いを抱いて思わずカモシカスポーツ横浜店で買ってしまったのがマムートのダウンジャケット。
アウトレットだったので値段はモンベルと変わらなかった。750FPダウンなのはモンベルに少し劣る。
このジャケットはシルエットが良い。この点がモンベルと大違いで、細身タイプで、フード周りもコンパクトにできている。
表面の生地は超薄手ではなく、わりと丈夫なのでガシガシ使えるのがいい。
そして偏愛しているのが胸ポケット。両脇腹にもポケットはあるけど、胸の真ん中は私にとって使いやすく、iPhoneなんかをよく入れている。左右のポケットに入れると、どちらに入れたかよくわからなくなるのだ。
欠点をあえて言うなら収納サイズ。いつもフードに収めるような畳むが、やはり少し大きい。これはモンベルの薄手生地、高フィルパワーダウンとの比較になるのでやむを得ないところもある。
結果は一長一短というところだろう。
3.Patagonia ダウンセーター
今更の定番モデルである。ただその定番を今年2019年に入って買ってみた。
感想としては、適度に丈夫な生地で、適度に軽い。800FPのダウンが適度に封入されている。暖かさはこれまた適度といった具合で、わりとトンがったところのない仕上がりである。
これを買ったきっかけは、ちょっとフードなしにしてみようかと思ったからである。モンベル、マムートともにフードを付きにしたが、最近使うフリース、パタゴニア R1フーディニにフードがあり、さらにニット帽、ダウンジャケットのフードを被ると、耳が横に出ている私には痛い。フードは一つで良かろうと買ってみた。
今年のゴールデンウィークに蝶ヶ岳から燕岳に縦走した際に使ったが、良く言えば違和感なく、悪く言えば特徴なく使えた。風を受けるとフードがない分、ちょっと寒い。
特徴は少ないものの、微妙な位置に内ポケットがある。
生地はスベスベしていて、着やすいのでわりと好き。こういう特徴の少ないハイスペックが一番使いやすいのかもしれない。
衣類は暖かい空気を纏うことであたを感じる。暖かさの原資は体温であり、摂氏36℃程度の体温で温めた空気を身につけることで人は氷点下でも生きてゆけるのである。暖かいダウンジャケットというのは要するに分厚い空気層を持つもので、単純にモコモコしている方が暖かいと考えればよい。理屈の上では風船を着ていればよいが、そうもいかないので中から膨らませるためにダウンが入っている。
ダウンは水鳥の胸毛で、タンポポの綿毛のようなものだ。ダウンジャケットや羽毛布団はこの綿毛を利用していて、山屋は鳥さんのお陰で生きて行けるのだ。