川を遡ることを遡行と言う。
これは沢登りをやる人なら基本用語なのだが、考えてみれば一般用語ではない。鯉のぼりじゃあるまいし。
それでも山があれば登り、川があれば遡るのが山屋であり、沢屋なのである。
川ではないのだけど、ふと玉川上水を遡りたくなった。
玉川上水は羽村の堰から多摩川の水を引き、武蔵野を突っ切り新宿四谷に至る。
江戸時代に掘削され、今はちょろちょろしか流れてないが、まあ歴史ある水路なのである。
『東海道中膝栗毛』では
「水道の産湯につかり、金の鯱を睨んでいた」
と弥次さんが威張るシーンがある。ここで言う水道は玉川上水を指し、当時は江戸くらいにしか水道なんかはなかったのを自慢しているのである。
いつも吉祥寺側にはいつも行っているので、立川の北あたりから玉川上水沿いに出る。
正確な位置はわからないのだが、写真のとおり水辺に降りられるところがある。玉川上水駅の少し東。歩いて10分くらいだろうか。
降りてみると水は意外ときれいだ。そのまま飲みたくはないけど。
玉川上水駅からは桜と竹林が見える。このあたりからは時折桜が上水沿いに咲いている。
玉川上水駅までは小楢などの林の中を歩くのが、桜並木になると日差しが少し暑い。それと単調になってくる。
それと上水に入れないように網状の塀が続いているのがなんともストレス。水が見えないと遡行している感じがしない。最終的に中福生公園で遡行を諦めた。
往復6時間は歩いただろう。遡行のつもりが中途半端になってしまった。
自転車なら通しで辿るのにちょうどいい距離かもしれない。玉川上水は人の手で掘削したものなので、間違っても人力以外で遡行してはならない気がする。