クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

登山で些細なミスが命取りになりかけた話

先日の白毛門登山は比較的予定調和に終わった。

無風快晴の中で登頂し、予定していた電車に乗ることができた。ついでに久しぶりの外食を堪能して帰った。

しかし、些細なミスから、あるいは大怪我をしていたかもしれないことが起きていた。

 

白毛門登山の中盤。樹林帯を抜け、雪稜と岩場が交互に現れるエリアに差し掛かった時だ。私は岩場をクランポンガリガリと歩いていた。岩は稜線を塞いでいるので、右手を少し巻き、3mほど下ってから登る。

なんてことのない場所だった。

少し段差があったので、私は岩に腰掛けるようにして下ろうとした。岩の上にかがみ、左足を踏み出す。次に右足。

その時、妙なことが起きた。両足を地面について立ち上がろうとした瞬間に背中を強い力で引かれ、なぜか右足が浮き上がる。

おかしいと思ったときには私は後ろにバランスを崩していた。

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重心を失った身体は後方にコロリと転がった。

転がる瞬間に、私は自分のミスに気が付いた。バックパックに付けたアックスの紐がかがんだ時に右足のクランポンに引っかかったのだ。それによって立ち上がる瞬間、バックパックが引っ張られ、右足が浮き上がった。

私は見事に後方へ一回転して、その下の灌木に引っかかった。

ふわりと柔らかい感触で、怪我はどこにもない。ストックを1本見失い、あきらめようかと思ったらすぐ右手の先に落ちていた。

 

体勢を立て直して、何事もなかったかのようにまた登りだした。

相方はびっくりしていたようだった。

あの時、下に灌木がなかったらおそらく雪面を滑落しただろう。雪面ならいずれ止まることもあるが、途中で岩が出ていたら大怪我をしたかもしれない。

あそこに灌木があったから無事に帰れたに過ぎない。

しかし、命とは無数の奇跡の上に成り立っているとも言える。こうして今、コーヒーを飲んでいるのも奇跡なのだ。