クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

深田久弥の『日本百名山』と野口英世の親孝行~偉人の真実

今、我が家にはテレビとHDDレコーダーが一応ある。しかしながら、付けるのは週末限りで、先週は全く見なかった。

その中でわずかに見る番組の一つがNHK「グレートトラバース15min.」。アドベンチャーレーサーの田中陽希さんが百名山を人力で旅するもので、今地上波で放送されているのは数年前の再放送だ。

百名山は作家・深田久弥が『日本百名山』として連載したもので、特に公式機関の選んだものでない。ただ、現在は「百名山」の標識は必ず山頂にあるほど「公的」権威を持つものとなっている。

f:id:yachanman:20211014071135j:plain

結局、登らなかった先日の西吾妻山

深田久弥はクソ野郎だよ」

と相方は言う。日本の山を愛した人であるから清廉潔白の君子かと思いきやそうではない。深田久弥の初期の作品は最初の妻・北畠八穂に手を加えたもので、いわば盗作。しかも、その後、妻が重病に侵される中で浮気をし、復員後に離婚。北畠がこの盗作事実を告発したことで、文壇での地位を失うことになる。

地位と名誉を失った深田は故郷でひっそりと暮らしながら、好きだった山登りを再開し、『日本百名山』を書くことになる。

まあ、美談にしようにも脊椎カリエスに侵され、しかもゴーストライターをやっている妻がいるのに、他の女と通じて子どもを作り、離婚するのだから言い訳しようがない。不倫があるから『日本百名山』があるのだが、山の涼風に似合わないのは間違いないようだ。

 

福島、猪苗代でよく見るのが野口英世記念館の案内ポスター。ポスターには必ず母しかとの仲睦まじき写真が載っていていかにも親孝行な息子に写っている。

しかし、野口英世は病理学者としての偉大な研究とは別に、とんでもない遊び人という一面があり、東京で学生をしながら、遊郭に入りびたり、金を借りては踏み倒すことを繰り返した。

しかも、母しかが拙い文字で「帰ってきてほしい」と嘆願するのを無視して、結局1度しか帰らなかった。ポスターに掲載されているのは、おそらくたった1度の帰省時の写真だろう。

その母の出した手紙が記念館に残っいる。このことは母の愛という美談として語られるわけなのだが、息子の方は学問が忙しいというより遊び呆けていたというのが事実のようだ。

f:id:yachanman:20211015071511j:plain

猪苗代湖方面の眺め

深田久弥野口英世も故郷では英雄として記念館が建てられているが、人間的にも素晴らしいというわけではないらしい。逆に現代は人間的にもパーフェクトな人しか表舞台に出られず、少々の醜聞も誇大に伝えられてしまい、なんとも生きづらい世の中だとも言える。

太宰治も借金を作り、友人を身代わりにして逃げたという。

「友人を身代わりにして逃げるなんてそんな奴が『走れメロス』なんか書くなよ!」

そうやって相方が勝手に憤っていると、山友夫婦の夫君がこう言った。

「だからこそ書けたんじゃない。メロスだって自分が死にそうになって友人を身代わりにして逃げたんだから」