山の本の代表格と言えば、深田久弥『日本百名山』である。あまりに有名なので、私も買って本棚に入れてはいるものの、なかなか完読できないでいる。
なぜかと言えば行ったことのない山は読まないからである。
先日、行った会津駒ヶ岳で私は百名山のうち47に登ったことになった。まだ半分である。去年は利尻山、後方羊蹄山を加えたのみ。
まだまだ行っていない山が多い。
先日行った会津駒ヶ岳の章をようやく読めた。
読むと面白い。尾瀬沼から歩いて檜枝岐村に入り、一泊してから登頂している。尾瀬沼からなんて今なら考えもしない。山から山に渡り歩いている。
今ならレンタカーやマイカーでぶーんと飛ばすところも歩くか泊まりを入れて行くところがいい。登山ではなく旅なのである。
本来、槍ヶ岳なんかも島々から徳本峠を越えて上高地に入ればかなりの旅になる。高村光太郎なんかも徳本峠を越えて上高地に入っている。その当時は今より世俗から抜け出た感じがしただろう。
百名山に選ばれるや登山道が整備され、ツアーバスが組まれ、深田久弥の愛した山の世界は失われていった。
登山は純粋に登山という目的となり、旅の要素は消えていったのだ。
私は嗜好として山というより旅が好きだ。バックパック1つにすべての装備を詰め、ふらりと山に登り、ふらりと街を散歩する。
そんな旅の原資は時間と金と気力。仕事をしている日常は、金は貯まれど時間と気力が削がれる。仕事を削ると金がなくなり、適度に仕事をしていないと遠くに行きたいという気力が削がれる。
適当な旅のバランスを取るのが難しい。今は仕事仕事の日々なので、とにかく寅さんのようにフーテンの旅がしたい。