少し前の山岳雑誌を見ると時折隔世の感を受ける。
「携帯電話は山では通じないことが多いので役に立たない」とか「電池切れの恐れがあるので、モバイル地図だけでなく紙の地図を持ちましょう」など。山自体はそんなに変わらないので、ルート情報はそのまま使えるのに、テクノロジーの部分だけに時の流れを感じる。
携帯電話が通じないことがあるのも、電池切れの恐れがあるのも変わらないのだが、記事そのものには新しいテクノロジーへの拒否感が少し漂っていて面白い。
今回は、山におけるスマートフォンについて考察してみたい。
十数年前の『山と渓谷』を読んでいると、「携帯電話は稜線では通じることがあるが、通じないと思った方がいい」とあった。当時はドコモは通じる可能性はあったが、Vordafoneは絶望的。auは中間。
登山をやるためにキャリアを変える人もいたし、初期のスマートフォンは電池の持ちが悪いという理由でいわゆる「ガラケー」をドコモで買った山友もいた。
ただ、基本的にスマートフォンなどのテクノロジーにすがるのは邪道で、地図にコンパス、そしてセルフレスキューができないとイカンというのがもっぱらの意見だった。
そんな反テクノロジーの姿勢が徐々に変わってきたのはここ10年くらいだろうか。
時々一緒に行く山友が「山と高原地図」のWeb版を登録したという。GPS機能が付いており、現在地を指し示すという。
登山道を辿っているうちは別になくてもいいようなものだが、山梨県・甲武信ヶ岳の南にある鶏冠山に行った時に役立った。鶏冠山から尾根伝いに甲武信ヶ岳に向かうには猛烈な藪漕ぎがあり、真っすぐ歩いているのかわからなくなる。この時、彼女は時折現在地を確認していた。
今でもそうだが、GPSは時々ずれを起こす。登山道以外では結局は現場でルートを探すしかない。しかし、ルートミスを防ぐくらいには役立つ。
かつてに比べるとスマートフォンの電池は結構持つようになった。山に入ったらすぐにエアプレーンモードに切り替えるので、私の場合は5日くらいは使える。夜は完全に電源を切ればもっと持つだろう。
ただ、Bluetootheで音楽を聴いたり、スマートウォッチに接続したりすると到底持つわけがない。テクノロジーに頼るのがよくないという以前にスマートフォンを使いすぎると何のために山に来ているのかわからなくなるという問題がある。
結局は安全に楽しめる範囲でスマートフォンは活用するしかない。