行きの飛行機はJTAだった。
日本トランスオーシャン航空の略らしい。"Japan Transocean Air"?それとも"A"はAviationかAir Lineだろうか。
それはともかく機内の冊子が面白かった。
沢木耕太郎さんのエッセイ。
石垣島に行ったものの、天気予報はこの先4日間雨だという。しかし、この4日間しか石垣に滞在しない沢木さんは何としても晴れてほしいと願う。晴れた海があって八重山諸島に来た甲斐があるというものだ。
すると、翌朝一瞬の曙光が差した。わずか写真数枚を撮る間しかない時間だったが、島の神様の貴重な贈り物となった。
これだけの内容なのに、読ませるところがすごい。「そうなんです!光の差した海が見たいんです」と飛行機の中で膝を叩きたくなった。
しかし、来てみたら雨。私も光が見たかった。
宮古島2日目。北端に位置する池間島を巡って、私たちは宮古空港のあたりまで戻って来た。
島の北東部は畑と漁港があるものの店舗は極端に少ない。結局昼食は市街地まで戻って探すしかなかった。
ふらりと入った1つ目の店は「お昼の材料がなくなったんで」とお断りを受ける。
そこでふと目に入ったのが「天丼」の文字。考えてみれば初日も揚げ物祭りだったけど、腹も減ったし入ることにした。
天丼を含め、宮古島のグルメについてはいずれ書きたい。
とにかく1650円という高価な天丼だったけど、サクサクして美味しかった。このサクサクが沖縄特有の天ぷらにないところなのだ。
天丼の店を出るといつの間にか青空が広がっていた。
島の天気は目まぐるしく変わる。
昼食後は真打ち伊良部大橋を目指した。伊良部大橋は3540mの無料で渡れる日本一の橋となる。長い橋ということでは、明石海峡大橋や瀬戸大橋なんかがあるけど、車でしか渡れない。東京のレインボーブリッジは徒歩で渡れるのだが、基本的に車の走る脇を避難民のように歩くだけ。何よりこれらの橋は海から高すぎて開放感に欠ける。
それで行くと伊良部大橋は海までの距離が近いし、空も大きく見える。海に伸びる一本の道という感じがして素晴らしい。
少々残念なのが、池間大橋のような歩道があるわけではなく、路肩を走ることになるのでむやみに立ち止まれないこと。絶景なのになかなか写真を撮ったり、のんびり海を眺めることができない。橋の中は基本的に駐停車禁止となっている。
しかし、ようやくの青空。海が良く映える。
ちなみに伊良部大橋は真ん中が大きく登っているが、これは船舶が通過するためのようだ。
伊良部島に渡って半周した。
伊良部島では渡口の浜が美しいらしい。行ってみるとサンゴ礁の粒の細かい砂がサラサラした海岸。砂というより粉という感じの感触だ。
本当は島を一周したいところだったけど、ちょっと時間切れ。再び雲も出てきたので、島を横断して佐良浜という集落に抜けた。
佐良浜は角幡唯介さんの『漂流』のテーマにもなる漁村で、少々気になっていた。行ってみると想像以上に大きな集落で、坂道の脇を家が密集している。海風のせいか壁の色が変わった家が多い。
村のAコープの前では、紐を付けていない老犬がふらふらと歩きまわっていて、おばあさんから「おうおう、そんなところいると轢かれるぞ」と注意されていた。
この日は光と青い海を見ることができたので大満足だった。
沢木さんは一瞬の光に満足したようだからこれで文句を言ったのでは宮古島(というか伊良部島や池間島も)の神様にバチが当たる。
今回はこの海が島からの贈り物なのだ。