クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

新幹線の旅冊子の愉しみ

盛岡へ行った帰りは東北新幹線で帰った。

毎度のことながら帰りは少し切ない。行きの高揚感もなく、わずか3時間ほどで日常へとリセットされる。

帰りの時間が短くなってしまうのは新幹線のせい、というかお陰だ。盛岡からトンネルをどんどん潜って東北を突っ切ってしまう。

私にとって新幹線は貴族の乗り物にあたる。

飛行機は王族、新幹線は貴族、特急はブルジョワ普通列車は庶民という具合のランク付け。その他に高速バスという庶民の中でもやや下級というかリーズナブルな乗り物もあって、今回も往路に利用した。

それでいくと、タクシーは成金の乗り物で、私のような庶民の身分では。救急車の次に緊急時にしか乗れない。ただ、今回は盛岡駅から登山口まで行くのに、時間がもったいないので使ってしまった。

 

何の話をしてるんだっけ?ああ、新幹線だ。

帰りの新幹線、緑の流線形の車両に乗り込む私の愉しみは前の座席ポケットにある。東北新幹線だと『トランヴェール』という旅冊子が入っていて、9月は新潟特集だった。

新幹線、特急、飛行機には大抵この手の冊子があり、巻頭には筆力のある作家が、サラサラと書いたコラムがあったりして旅の余韻を楽しませてくれる。

以前、剱岳から下山して、信濃大町から特急あずさ号で帰ろうとしたところ、中央本線が山梨で不通になって立ち往生したことがある。松本からあずさ号は出ないというので、松本から長野へ迂回し、北陸新幹線で東京に戻ることとなった。

北陸新幹線にある冊子は旅のコラムが充実していてよかった。筆力のある作家、確か沢木耕太郎なんかが入っていたと思う、が書いていて、ボリュームも多い。「ご自由にお持ちください。」とあるので持って帰ろうか迷ったほどだ。

 

数年前に一関から東京まで東北新幹線で帰った時も冊子を開いた記憶がある。この時は内容を覚えていないところをみると、東北より北陸の方が面白かったのだろう。

東海道新幹線は帰省などで頻繁に使うが、そういった冊子はない。東海道はビジネス路線であり、移動中もPCで仕事をする人が多い。余計な誘惑は排除するということか。

それでいくと九州新幹線は座席のおしゃれ度もさることながら、旅冊子も充実していた記憶がある。もうずいぶん乗っていないけど、今度行ったら確認しよう。

 

あの手の冊子は本来時間つぶしに作られたのかもしれない。

しかし、旅行に出ると私はついつい手に取ってしまう。そして旅に来たことを実感し、また旅に出たくなるのだ。