と言っても全く読んだことはないし、どういうストーリーなのかも知らない。相方にあらすじを聞きつつ登ることとした。
登山口の鴨沢でバスを降りると鬼滅の雰囲気を意識した幟が立っている。
『鬼滅』は雲取山から話が始まるらしい。
昔昔、雲取山で炭焼きをしていた一家がおりました。そこに鬼がやって来て、ミナゴロシにしてしまいました。
いきなり凄惨な話である。そんなに怖いところなのか、雲取山は
それだけあって人気の山なので、道は山とは言い難いほど整備されている。藪を漕ぐことも岩場を越えることもない。ただ、日帰りするには標高差が1000mほどあるし、距離が長い。バスの時間もあるのでわれわれは黙々と歩くこととした。
歩き始めて早々に廃屋でサルが暴れている。現代の雲取山には鬼ではなくサルが出るらしい。
『鬼滅』では主人公・炭治郎の家は炭焼きをしていて、彼自身も毎日雲取山を往復して鍛えていたらしい。
「相方はこんな整備された道だと炭治郎君もトレーニングにならないだろうな」
と言った。
しかし、それは雲取山までの道のりがどれほど遠いか、この時はまだ知らないからなのだ。
(つづく)