この冬最大の寒波が来たらしい。
前日から備えとして極暖の長袖シャツと安物のタイツを用意することとする。本当は地番暖かいダウンジャケットの方がいいのだが、着膨れするので去年買ったモンベルのコート。これもインナーダウン内蔵でそこそこ暖かい。
末端冷え性なので、手袋は特に暖かいものに。山道具を入れている棚を漁って、ブラックダイヤモンドの3本指手袋を引きずり出した。
かなり大袈裟な出勤準備である。
厳冬期登山を始めて知ったのは、寒いのは何とかなるということだ。
暑いと脱ぐのに限界はあれど、寒ければ着ればいい。厚着すれば暖かいのは、体温が衣類の中の空気を温めるわけで、要は36℃くらいの体温が最も暖かいのだ。
着ればマイナス40℃の世界でも理論上は生きてゆける。
私の経験した中ではせいぜいマイナス20℃くらい。30℃を下回る経験はおそらくない。
角幡唯介さんの『極夜行』、『極夜行前』を読むと40℃未満という話が出てくる。ここまでになると随分と違うらしい。どう違うかは現地に行かないとわからないだろうが、鼻毛は凍るだろうし、まつ毛も凍るだろう。風が吹けば頬も凍傷になるだろう。
寒い時はじっとしているのが一番寒いので動くしかない。結局は体温を上げることが一番の防衛策になる。山野井泰史さんなんかは著書『垂直の記憶』を見ると世界第2の高峰K2の頂上で素手になっている。動いていれば大丈夫ということの証明でもあるけれど、これはまた超人的もある。
さて、寒い寒いと言いつつ大げさな格好で出勤した。
ただ、思ったほどでもなかった。私もまた寒いことを楽しんでいるところがある。