テント泊ではトラブルが続出したものの、天気がいいのが幸いした。
1日目「わあ、きれい!」と声がしたのでテントから這い出してみると目の前の鳳凰三山が赤く染まっている。小屋の前まででると夕日が仙丈ヶ岳の脇からさらに向こうの山並みに落ちようとしている。
テントから小屋から次々人が這い出して来てはスマートフォンやコンパクトデジカメでバシバシ撮って引き上げる。私も一眼レフであっちへこっちへ撮っては夕日をぼんやり眺めた。
その日は疲れていたのか6時過ぎには寝てしまった。もう初冬で、気が付くとテントの中で濡れた手ぬぐいが固く凍るほど寒い。足元が冷えて、10時ごろに目が覚め、その後2時間おきくらいで目が覚めてはまどろむのを続けた。
翌日は4時過ぎにテントを出る。
東がぼおっと橙に色づいている。寒いのでテントの中で靴を履き、外でチェーンスパイクだけ着け、ピッケルを持って再び頂上へ。アウターとしてレインウェアを着て、その上からダウンジャケットを羽織るという珍妙な格好にした。
1日目に速く登り過ぎたのか軽い高山病だ。ペースが上がらず身体が冷える。指先はなかなか温まらない。
そうこうしているうちに30分程で頂上に着いてしまった。
着いてもまだ日は登らない。ご来光目当てに三脚を立てている人もいるが、寒そうだ。
20分も待っただろうか。いよいよ日が上がった。
今度は富士山のやや左から出る。当然夕日とは逆の方向。夕日が燃え盛るように落ちるのに対して朝日は熾火が薪に燃え移るように少しずつ力を増していく。
朝焼けショーが終わるとテント場まで下り、テントを畳むとそそくさと下山した。
下りるほどに暑くなるので、少し下りてはダウンを脱ぎ、次にレインウェアを脱ぎ、チェーンスパイクを外しして、2時間ほどで下りた。
コロナのせいもあって、ほとんど誰とも話すこともなく、夕焼けと朝焼けを見に行く登山だった。