クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

年齢と将棋のスタイルと生き方

最近めっきりやらなくなったが、登山やランニングの他に将棋が好きだったりする。ただ、周囲に話をする相手もいないので、ブログにでも書いてみようと思う。

 

現在、王将戦藤井聡太王将に羽生善治九段が挑戦している。20歳の王将に52歳の挑戦者ということで32歳差が話題となっている。今のところ1勝1敗だ。

初心者ながらに見ていて驚くのは羽生九段のスタイル。相掛りと角換わりを得意とする若きチャンピオンに対して相手の土俵で勝負を挑んでいることだ。

過去のタイトル戦における年齢差対決では大山康晴南芳一で40歳が最大らしい。

大山康晴は昭和を代表する大名人だが、40歳ごろから最新形から当時はマイナーな振り飛車に転向した。大山が振り飛車党になったことを、同時代の棋士河口俊彦は「最新形を研究する時間がなくなった」のではないかと推測している。

どの分野でも最新の勝負は若手の領分で、ベテランが入り込みにくくなる。年を取って新しいものを吸収し続けることの難しさを示している。

その点でいくと羽生善治というのは歴代の名人とも大きく異なる。

特定のスタイルにこだわらず、相手の注文にどんどん乗っていく。年齢が上がると自分の得意不得意もわかってくるし、新しいスタイルを取り入れるのに躊躇するようになる。無様な負け方をすると周囲の目もある。

どんな戦型でもある程度の戦いができるというのは、自信の裏付けということも言える。ただ、羽生九段を見ると常に最新の形を取り入れるのは飽くなき好奇心と失うことへの恐れのなさにも見える。

それが50歳を超えて、挑戦者としてタイトル戦の場にいることに繋がっているのだろう。

 

父がかつて英語のできない社員を嘆いて言っていた。
「人間も動物と一緒。進化論や。進化しなければ滅んでいくんや」

新しいスタイルや好奇心を失ったら進化は止まる。逆に好奇心があれば年を取らないのだと言えるかもしれない。