クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

お見受け

ある日会社にかかってきた電話を取ったら、こんなことを言われた。

「○○株式会社の○○という者ですが、御社が○○というアプリを出されているとお見受けしました」

アプリの広告宣伝をしたいという営業電話なんだろうけど、私には「お見受け」が引っかかって頭に入らない。

「拙者、○○藩の○○と申す者。貴殿相当の使い手とお見受けした」

とか、そんな時代がかった文脈じゃないとなかなか聞かない。

結局、「お見受け」に対する思考が頭を巡る中、うわの空で担当部署に取り次いだのだが、どうも聞きなれない言葉を使われると引っ掛かってしまう。

関係はないけど健在だったころの熊本城

「お見受け」とはそもそもどういう意味か。

「お見受け」は「見て察する」という意味である。見たままではなく、見たことから推測しなくてはならない。「相当の使い手」とお見受けするのは、見た状況からさらに踏み込んで判断したことを示している。

したがって、先の営業電話はアプリを出しているというホームページの情報を見たというだけの話しだから、「お見受け」を使うのは誤りと言える。

ただ、違和感の直接的な原因はそれではない。敬語が難しいので、とにかく頭に「お」の付く言葉を使えば安心というところがあるようだ。

 

唐突に「お見受け」なんて聞いてたじろいでしまった。

この調子だと「見解」を「お見立て」なんて言いかねないなぁと思う。「お見立て」は見て選別することを指すが、俗に吉原で遊女を指名することを意味したりする。

落語「お見立て」では、「(馴染の花魁)喜瀬川は死にました」と嘘をつかれた男が遊郭の店員に「喜瀬川の墓はどこだ?」と詰め寄る。最初は適当な墓を指していた店員は最後窮して「よろしいの(墓)をお見立てください」と答えるのがオチとなっている。

今度は「お好みのものをお見立ていただけます」などという営業電話がかかってくるかもしれない。