相方の学校の生徒(小学5年生)がピアノの全国コンクールに出るという。
それはすごい話なのだが、本人はいたって冷静で、将来はピアニストを目指すのかと思いきや、こう言ったという。
「経歴に加えたくて」
なんだそれ!なぜ10歳くらいで経歴を気にするんだ?
この傾向は決してその子の特殊な考えと言うわけではないようだ。
私の隣にいる後輩は去年から簿記2級の勉強をしている。勉強熱心なのはいいことなのだが、これも今のうちに取っておきたい。まあ若い頭で資格勉強をやっておくというのは考えとしてアリかもしれない。ただ、実践で活かすというより、単に取るという雰囲気だ。会計の知識なんかは使わないとすぐに古びてしまうし、基準もどんどん変わる。
彼は時々私に簿記を訊いてきたが、実務に活用しようとするでもなく概して機械的に解こうとしているのが見受けられた。ちなみに私は簿記2級を持っていない。
どうも日本人は経歴をコレクションしたがる傾向にある。
県下一の高校に通い、旧七帝大か慶応早稲田、末は銀行員か。順調な人生、納得いく人生だったと思うために経歴を集めていくのだ。
こうすれば人生の道筋としてはわかりやすい。特に団塊の世代はこういう流れが多いから、結婚するにしても相手の両親を納得させやすいだろう。
平成不況と言われるようになってから、政治家・官公庁・企業のどれもが「先の見えない世界」とか「混迷の時代」と言いながら、自分の人生だけは先を見通せる灯りが欲しいらしい。この経歴があれば一生安泰とか、この資格があれば一生食っていけるとか、そういった保険を欲しがるのだ。
かく言う私も役に立つかわからない資格を数個(電気、ガスとか)持っている。実務に使っていない以上、いざ仕事でやれと言われたら危ないばかりだ。活きない資格や経歴をいくら集めても意味がない。
本当に必要なのは血肉となる経験や今を生きることへの充実感、この世界は生きるに値するという感覚ではないだろうか。
経歴コレクションを理想通り集めたらどうなるのだろう。
ヤマザキ春のパン祭りみたいに、25個集めたらお皿がもらえるのだろうか。