夏用の登山靴を探して奔走している。
以前はLA SPORTIVAのTRANGO TRKというモデルを使っていて、結構気に入っていた。写真は歴代の3シーズン用登山靴で、一番下がTRANGOである。
この中では最も価格が高く(税込3万円弱する)、最もスポーティーな印象だ。
ところが去年の8月に白馬で浸水、11月は黒部でもずぶ濡れ、というわけで防水機能が失われたので引越しの際に廃棄してしまった。
フィット感、軽量性は抜群だったので非常に惜しい。
デビューは雨の南アルプス・聖岳。黒部・下の廊下でも雨に降られた。2年前には七倉から黒部湖、読売新道、西鎌尾根、大キレットを4泊5日で縦走。3日目の三俣山荘から西鎌尾根に向かう途中でも雨に打たれた。
ただ、高かったんだし3年は早いだろう、と言っても仕方がない。
新たな登山靴探しに出かけた。
登山靴は選択肢が多いようで少ない。
要は足に合うか合わないかで決まるのだから、どんなに高性能でも足に合わないと無用の長物となる。私にとってその典型はSCARPAの岩稜向けの靴で、店頭では調子良かったが、現場では数回しか履いていない。とにかく爪先が細くて小指が潰れるんじゃないかというくらい私の足には合わなかった。
GW2日目の日曜日(土曜出勤したので私にとっては初日)、ジョギングがてら井の頭公園まで走り、吉祥寺のMt.石井スポーツに入った。文字通りの奔走である。
やけに愛想の良い30歳くらいの店員のお兄さんに声をかけられ、試着してみる。MAMMUTのDUCANというモデルがおススメだという。
「これは下にスチール板が入っているんですよ。ソールは軟らかいですが、足全体で衝撃を吸収するようになってます」
なるほどなるほど。ってよくわからんが新しいテクノロジーが使われていることはわかった。早速試着させてもらう。
「普段の靴下は厚めですか?」
「厚めです」
「はい!ではこれを!」
おいおいペラペラじゃないか。と心の中でツッこむがまあいいや。
履いてみると足回りの感触は結構固い。まるでクライミングシューズだ。その分軽いと言えば軽く感じる。
試着用スロープで歩いてみた。ただの傾斜なので衝撃を吸収しているのかわからない。岩に乗るなどしないとスチール板の威力は確認できなさそうだが、残念ながらその店舗にはそのようなものはなかった。
しかしながら問題は足首周りで、とにかく固くて私の足にはなじまない。骨が当たって痛い部分もある。
「足型はいいですが、足首が痛いです」と店員さんに話す。
「そうですか~」
次にLA SPORTIVAのTX5を試した。
足入れの瞬間、思わず「あっ!さすが」と声が出た。MAMMUTに比べるとF1とロールスロイスくらいの差がある。両方とも乗ったことがないが。
履いて歩いてみた。悪くない。でも高いんだし何かもうひと押しほしい。
「うーん。やっぱり前履いていたTRANGOの方がいいかも」
と言うと、
「そうですよねー。使い慣れたものが一番です」
と返ってきた。
結局テントマットだけ買って店を後にした。
迷ったのもあるが、店員のお兄さんはちょっと苦手なタイプだったのもある。最初に声をかけてきた時、
「前の靴を履きつぶしたんで次を見に来ました」
と言うと、
「ええ~!」
とのけぞって驚いた。リアクション大きいっちゅうねん!
「靴は最後足に合うかですからねぇ」
と言うと、
「そうなんですよ。雑誌にライターが書いたりしてるんですけど『やめてくれ!』って言いたくなります。靴は性能だけで決められないんですから」
と返ってきた。おいおいMAMMUTの靴を勧めとったやないかい。
よく言えばノリが良い、悪く言えば調子の良い感じだったので、このお兄さんの言う通りにして大丈夫かな?と疑問が沸いたのだった。一方であんなノリの良いお兄さんは楽しいという人もいるのかもしれない。
いやはや接客業は難しい。